【スプリングフィールド(米ニュージャージー州)26日=加藤裕一】今季メジャー最終戦・全米プロは今日28日、バルタスロールGC(7428ヤード、パー70)で開幕する。松山英樹(24=LEXUS)は開幕2日前のこの日、18ホールの練習ラウンドを消化。80年全米オープンで青木功がジャック・ニクラウスと死闘を演じ“日本男子がメジャー制覇に最も近づいた場所”で、念願のメジャー制覇に挑む。

 戦う準備は整った。練習ラウンド2日目。最終18番パー5(554ヤード)で、松山が2オンを決めた。フェアウエーからピンまで残り226ヤード。5番アイアンの一振りはピン前8メートルにキャリー、ピン横1・5メートルのイーグルチャンスについた。

 アイアンを戻した。5月からキャビティバック型のモデルを使ってきたが、全米オープン、全英オープンでメジャー2戦連続予選落ち。特に全英はパーオン率28%に低迷した。そこで4月のマスターズまで使っていたマッスルバック型を再投入。「気分転換です」と素っ気ない一方で「う~ん、全英のデータを見てビックリするぐらい悪かったので…。戻して良くなれば」と決断の背景を明かした。

 バルタスロールGCは運命的な場所だ。80年全米オープンで青木がニクラウスと演じた“バルタスロールの死闘”は日本ゴルフ界の語り草。ロッカールームの通路の壁には、当時の青木の写真やニクラウスのスコアカードが飾られている。米国でも高い評価を受けた戦いを松山は「知ってますけど、だからといって、僕がよくなるとは限らないし…」。幼少時から憧れる大先輩の偉大な足跡が残るコースで、日本男子初のメジャー制覇の夢がかなえば言うことはない。

 メジャーで初めて連続予選落ちを喫し、再出発となる17度目のメジャー。「2日間が終わって落ち込んでるかもしれないけど、気持ちを切り替えて頑張りたい」。挫折を乗り越え、頂点を目指す。

 ◆キャビティバックとマッスルバック 前者はヘッド背面部にキャビティ(空洞)があり、シンが大きくヒットのミスに優しい。後者は同部がマッスル(筋肉)のように盛り上がり、シンは小さいが使い手の感性のズレが少ない。一般に前者が初心者、後者が上級者向け。

 ◆バルタスロールの死闘 同GCローワーC開催だった80年全米オープンで、大会4勝目を狙う当時40歳のジャック・ニクラウスと、38歳の青木功が繰り広げた名勝負。2人は通算6アンダーの首位で並び最終日最終組対決へ。マッチプレーのような一騎打ちで終盤に突入、ニクラウスが上がり2連続バーディーで通算8アンダーとして2打差で競り勝った。2人は予選ラウンドから4日間同組。