全美貞(33=韓国)が鮮やかな4打差逆転劇を決めた。

 スタート前は「優勝なんて全然意識しなかった。風もあって難しそうだから、とにかくスコアを落とさないようにしようと」。そんな不安を吹き飛ばすように、好調なアイアンで1・5メートルから4メートルのチャンスを作り、13番までに6バーディーを量産して、1組後ろの笠りつ子、鈴木愛と通算16アンダーで並び、17番で9メートルのロングパットをねじ込み、頭一つ抜け出した。

 ホールアウト後はプレーオフに備え、練習グリーンにいたが、念じていたことは1つだけ。「絶対にプレーオフは嫌!」。7月のサマンサタバサレディースで3年ぶりの復活優勝を遂げたものの、その後に2度プレーオフ負け。「笠さん、鈴木さんが連続バーディーで優勝してもいいから、プレーオフだけは絶対にしたくなかった」と話した。

 復活優勝まではゴルフを辞めることも真剣に考えた。「何をやってもうまくいかず、自信がどんどんなくなって。本当に辞めた方がいいなと考えた」。昨年後半からプロ野球やプロサッカーチームも担当する韓国の精神医を頼り、アドバイスを受けるほど悩みは深かったが、優勝ですべての悩みが解消。「私以上に家族や、応援してくれる人が喜んでくれた。『私1人の喜びじゃないんだ』と思うと、本当にうれしくなった」。

 これで日本ツアー通算24勝。13年に他界した、韓国女子プロゴルフの大先輩・具玉姫さんの23勝を上回った。「実感がなくて、なんか不思議な気持ちです。でも、私も(キャリアが)恥ずかしくないゴルファーになっていきたいです」。長年の夢、日本ツアー30勝で永久シードにはもうこだわらず、1歩ずつ進んでいくつもりだ。