日本ゴルフ協会(JGA)は20日、20年東京五輪のゴルフ競技会場に霞ケ関CC(埼玉・川越市)が決まった経緯を説明。あらためて同CCでの開催が妥当であることを訴えた。

 霞ケ関での開催に対しては<1>決定のプロセスが不透明<2>プライベートコースであり、五輪後も一般人はプレーできない。レガシーとして適切か<3>女性が正会員になることができない。いかなる個人も差別を受けないとする五輪憲章に抵触するのでは<4>暑さ対策がなされていない<5>都内からの移動距離が長い、などの批判があり、若洲ゴルフリンクス(東京・江東区)への会場変更を求める意見も出ている。

 今月4日には東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が霞ケ関について、選手村から遠く、輸送面で問題があるとの見方を示した。

 JGAは永田圭司副会長、山中博史専務理事がこの日、報道陣に対応。<1>~<5>の疑問に対し、1つひとつ答えた。

 まず<1>の開催コース決定のプロセスについては、国際ゴルフ連盟(IGF)から条件として「トップ選手の技術を引き出せるレイアウト」「2万5000人以上の観客収容能力」「天然芝のある300ヤード以上の練習場を備える」などを求められたと説明。

 これをもとに首都圏の有名コースが絞り込まれ、最終的に第1候補の霞ケ関と第2候補の横浜カントリークラブが残り、霞ケ関が開催地として承認されたと明かした。

 若洲ゴルフリンクスについては、12年2月に五輪招致申請ファイルを提出する際にゴルフ競技開催コースとして記載したいと東京都承知推進部から求められた。

 JGAは大会規模から若洲では対応できないと考え、どの程度の改修を予定しているのか東京都に確認したところ、ほとんど何も考えていないことが分かり、「承認できない」と通知。だが最終的には「別会場への変更も可能だから」と押し切られ、記載を許してしまったという。

 若洲はその後、前出の開催条件を満たせず、12年4月には候補から外れた。JGAは「最悪の事態として霞ケ関での開催が不可能になったとしても、若洲ではなく横浜での開催を検討するのが筋」と考えているという。

 <2>の問題については永田副会長が「プライベートとはいえ、年間の来場者6万人のうち、2万5000人はビジター。その他にもいろいろと開放しており、社会に貢献しているコース」と説明。その上で「レガシーとして残るのかとよく言われるが、レガシーには、スポーツが正しく発展していくという無形の遺産もある。私は日本のゴルフ界ではすでにレガシーが始まっていると思う。国際大会でメダルを取る選手をどうつくるのかと、プロアマの垣根を越えて選手強化についての議論ができてきている」と五輪開催の意義を強調した。

 <3>については「日曜日もプレーできる正会員、議決権のある社員には女性はいませんが、週日会員(平日と土曜日にプレーできる)および家族会員には200人以上の女性がいる」と永田副会長。

 その状況はIGFもIOCも理解しており、だからこそ霞ケ関は承認されたのだが、その上で今年に入りIGFから「女性会員の問題をどうにかできないか」とJGAに打診があった。そのため霞ケ関側も女性も正会員になれる方向で現在調整中だという。

 <4>については「(IGFの)ピーター・ドーソン会長もこの前おっしゃってましたけど、ゴルフは気候、寒暖を克服するゲーム。もっと厳しいところでやっている大会もたくさんある。しかも1番対応ができる競技。かさをさして歩いても構わないし、途中で食事も補給できる。ウエアも寒暖によって選べる。なんでゴルフだけ言われるのか、IGFにも分からないと思う。ギャラリーのみなさんの対策はこれからいろいろと真摯(しんし)に考えていくが、霞ケ関のように広い会場であれば、ミストテントを作ったり対応ができる。狭い会場では対応できない」と永田副会長。

 <5>については「今1番IGFが気にしているのは輸送の問題。ポリスエスコートなのか、五輪レーンを作るのか、道を広げるのか、いろいろ方法があるでしょうけど、これはあらかじめ分かっていた問題で、今後解決していく問題」と、山中専務理事が今後の課題として挙げていた。