今季限りで引退する宮里藍(31=サントリー)が、涙で“国内ラストラウンド”を終えた。12番パー5でバンカーから直接カップインしてバーディーを奪うなど大観衆を魅了した最終日は5バーディー、4ボギーの71。通算2アンダーの286で26位だった。今後は主戦場の米ツアーに専念。「頑張っても(試合は)9月まで」と明かし、今大会が国内最後になる可能性が高まった。

 振り返れば、苦しいことの方が多かった。ここ数年、宮里は悩む日々ばかりだった。だが18番ティーグラウンドに立ち、全景を見た時、鳥肌が立った。「まだこれだけの人が私を見てくれている」-。超満員で埋まった観客席。両サイドに何重もの人だかりができたフェアウエー。涙をこらえてプレーした国内ラストホールでカラーからパターで沈めてナイスパー。お辞儀をして手を振り、大歓声に応えた去り際。こらえていた涙が落ちた。

 宮里 ここ2年くらいは調子が上がらなくて、どうしたらいいか分からなくなった。自分を見失う時期が長く、プロ生活で一番つらかったです。ドライバーも、パターも、予期せぬ形で崩してしまった。今日の18番は、すごい景色でした。このホールにこれだけ人が埋まるんだ。想像していた何十倍もの人が来てくれた。

 失った自信。大観衆がそれを取り戻させてくれた。10番でチップインバーディー。12番ではバンカーから直接沈めた。興奮したファンが指笛を吹き、地鳴りのような歓声が起こる。世界ランク1位になった全盛期の姿はない。優勝争いからも大きく離され26位。それでも要所で見せる勝負強さと技術は、人々を酔わせるには十分だった。

 宮里 一生、記憶に残る1週間でした。18歳の時、ここまでなれるとは夢にも思わなかった。できることなら1人、1人にありがとうと伝えたい。両親も苦しい時期に同じ思いをしてくれた。ここまで支えてくれたことに感謝しています。