<男子ゴルフ:三菱ダイヤモンド杯>◇3日目◇30日◇茨城・大洗GC(7190ヤード、パー72)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)

 54歳7カ月の中嶋常幸(フリー)が、歴代2位の年長優勝となるツアー通算49勝目のチャンスをつかんだ。4バーディー、1ボギーの69で回って通算イーブンパーの216、前日の9位から首位と2打差の2位に浮上した。大洗GCは86年大会(当時三菱ギャラン)で優勝するなど得意コース。この日は、円熟ゴルフと2発のチップインバーディーで攻略した。

 円熟の技が光った。17番パー4、中嶋は残り40ヤードの右ラフから第3打をサンドウエッジで振り抜いた。降り続く雨で水しぶきを上げながら飛んだ球は、カップに吸い込まれた。20ヤード手前のラフから入れた15番パー5に続くチップインバーディー。首位と2打差に迫り「天才と言ってくれよ」と笑顔を見せた。

 アプローチがさえた。13番からは1度もパーオンしなかったが、焦らず「寄せワン」でノーボギー。先週から少年時代のアプローチの仕方を心掛けるという。「ことごとく成功した。やり方?

 なぜ教えないといけないの。しかもただで。そんな大事なことは言えないよ」とジョーク交じりに話し、感性重視のプレーへの手応えをにじませた。

 太平洋からの強風と20メートル級の黒松が高くせり出し、自然のハザードがあふれる難コースも、86年三菱ギャランを制するなど、得意としている。この日、パー3以外の14ホールすべてでドライバーを握った石川とは対照的に、中嶋は5ホールしか使用しなかった。「経験がものをいうコース。木より上には上げず、枝の下の低いショットを心掛けている」。最大瞬間風速16・1メートルの強風が吹き荒れた2日目も75と「被害」を最小限にとどめていた。

 息子の存在も励みにしている。長男で今季初シードの中島雅生(29)とはオフに岩山登りなど合宿を敢行。「刺激にはならないけど、成長を見るのは楽しみだし、頑張ってほしい」と父親の顔になった。今大会予選落ちの息子に対し「昨日も忍耐だった。その気持ちを息子に分けてあげたいくらいだね」とプレーを通して勝負哲学を授けるつもりだ。

 首位とは2打差で最終日を迎える。06年三井住友VISA太平洋マスターズ以来の優勝となれば、02年全日空オープンで尾崎将司が55歳7カ月で勝ったのに次ぐ、歴代2位の最年長優勝となる。「中年の星から熟年の星へ。最後まで忍耐で、自分のゴルフをするしかない」。17歳の遼クンばかりが注目される中、シニアツアーと二足のわらじをはく54歳が貫禄(かんろく)を見せた。【田口潤】