エビアンマスターズで米ツアー初優勝を果たした宮里藍(24=サントリー)の父で、コーチの優氏(63)が優勝の「秘密」を明かした。27日、母豊子さん(58)とともに成田空港から、宮里が出場する全英女子オープン(30日開幕、英国・ロイヤルリザム&セントアンズ)観戦のために渡英した。07年夏以降、引退もよぎるほどの不振が続いたあと、宮里は(1)グリップ(2)バックスイング(3)パットと技術的な課題を克服したと分析。どん底を味わったことで、人間としてもひと回り成長し、自信と心のゆとりがプレーオフを制してのVにつながったと優氏は指摘した。

 今までの娘とは違う姿が、そこにはあった。プレーオフの18番パー5、フェアウエーからの第2打。グスタフソンは第1打を右のグラスバンカーに入れた。安全策として刻む選択もあった。だが、宮里は残り205ヤードで、果敢に2オンを狙った。グリーン右奥のバンカーにつかまったが、このプレーに、娘の成長が凝縮されていたという。

 宮里優氏

 プレーオフだから(2オンを)狙うしかない。とてもいい選択だった。あの日、1番のスイングをしていたし、あの強気な姿勢が(バンカーからの)寄せ、(バーディー)パットにつながった。

 土壇場で強気な姿勢で最高のスイングができた。それは、悪夢のスランプを乗り越えたからこそだった。06年から米ツアーに本格参戦も、なかなか勝利を手にできない。07年に「もっと飛距離がほしい」との思いを強め、スイングの改造に取り掛かった。だが、逆に不振を招き、第1打が、隣のホールに飛んでいくほど、ドライバーの不調が続いた。

 優氏

 自分もつらい毎日だった。一緒にスランプの苦しさを味わった。

 一時は技術的なアドバイスは止め、感覚で打たせたこともある。だが、昨年の後半から宮里はショットの感覚を取り戻し始め、今年初めからは技術的な指導も素直に聞くようになった。オフは主に、3つのポイントを中心に改善をしてきたという。

 (1)グリップ

 改善前

 左手をかぶせ、右手を添える握り方をしていた。飛距離が出る時もあるが、フック気味に左に飛んでいく危険性が高かった。

 改善後

 左右対称なスクエアな握り方に変えた。

 (2)バックスイング

 改善前

 クラブを寝かせるように、低く上げていた。クラブヘッドが閉じるため、インパクトの時に、フェースがボールにかぶさり、左に大きく曲げる原因になっていた。

 改善後

 右斜め45度の方向へ、高く上げるようにした。

 (3)パット

 改善前

 スイングのテンポ、切り替えのタイミングがまちまちだったことが、ショート、オーバーにつながっていた。

 改善後

 トップから一定のスピードで加速させ、強めに打つ。

 改善による効果は数字にも表れた。今季の平均飛距離は昨季より13ヤードアップの256・5ヤード。フェアウエーキープ率も66・9%から75・2%に向上した。平均パット数も昨季の1・83から1・77に。エビアンマスターズでも、4日間の平均パット数27・25は1位だった。

 優氏

 毎日チェックして身につけた。(どこからでも入れられると)パットに自信がつけば、相乗効果でショットも良くなった。

 引退もよぎった大スランプ。技術的な進化はもちろん、精神的な成長も大きかった。苦しむなか、宮里は上田桃子、宮里美香ら、米ツアーの後輩たちに、優しくアドバイスを送った。時には食事に誘った。

 優氏

 「自分より先に後輩が勝ったらどうしよう」と普通は思うはず。でも藍は、苦しさを乗り越えたことで、人間的にも大きくなった。これはプロゴルファーとして大事なこと。人格も評価されないと、本当の世界のトップにはなれない。優勝まで遠回りではなかった。(スランプは)無駄ではなかった。【取材・構成=田口潤】