<米男子ゴルフ:全米プロ選手権>◇最終日◇14日◇米ジョージア州アトランタ・アスレチック・クラブ(7467ヤード、パー70)

 【ジョンズクリーク=木村有三】アトランタの奇跡だ!

 米ツアールーキーのキーガン・ブラドリー(25=米国)が、メジャー初出場初優勝を果たした。15番パー3で「6」をたたき、首位ジェイソン・ダフナーとの差が絶望的な5打差に開いたが、16、17番で連続バーディーを奪取。68で通算8アンダーとして、ダフナーとのプレーオフに持ち込み、粘り強く競り勝った。

 わずか30センチのウイニングパットを沈めると、何度も両手を突き上げた。夢に見たタイトルをメジャー初出場で手に入れた。快挙を達成したのは、若き25歳の新人ブラドリーだった。「信じられないよ。夢のようだ。5分後に目が覚めると、現実じゃなくなるようで心配だよ」。

 死の縁からよみがえった。15番パー3で、左奥からのアプローチがグリーンで止まらず池に転がり落ちた。痛恨のトリプルボギー。1組後ろの首位ダフナーとの差は5打差に広がった。絶望的な状況になったが、あきらめなかった。「難しいホールが続くし、どんなに差がついても、トップが安泰とは思わなかった」。

 16番で3メートルを沈めると、17番では15メートルの難しいフックラインをねじ込み連続バーディー。「僕の人生でも忘れられないパットだ」。猛反撃で重圧を掛け、15番から3連続ボギーをたたいたダフナーと3ホールのプレーオフに持ち込んだ。1ホール目の16番。相手が1・5メートルのチャンスを外すと、1メートルをしっかり決めた。5月のツアー初優勝も最終日に4打差を追いつき、プレーオフを制した。驚異の粘り腰を、初のメジャーでも発揮した。

 岡本綾子らと同世代の名選手パット・ブラドリー(60)を叔母に持つ。米女子ツアー31勝で殿堂入りした彼女の姿を見て「すべてをマネして成長してきた」という。父マークもプロゴルファーだ。カナダとの国境にあるバーモント州育ちで幼いころはスキーの選手として活躍したが、一族の影響は大きく12歳で「ゴルフをやる」と決意。新人の今季、一気に世界の頂点へと駆け上がった。

 米国勢のメジャー制覇は昨年マスターズのフィル・ミケルソン以来7大会ぶり。「フィルからも『我慢強くやれ』と助言をもらっていたんだ」。ゴルフ王国に威信を取り戻した新星は、うれしそうに笑った。