池田勇太(26=日清食品)が、大先輩の青木功(70)にまさかの熱血指導を行った。今日11日に沖縄・那覇GCで開幕する国内メジャー、日本オープンに向け、10日に練習ラウンドを行う予定だったが、急きょキャンセル。練習場で青木にアドバイスを送り、ドライバー飛距離15ヤードアップを実現した。自身はショット、パットの練習すらせず、クラブの調整のみで会場を後にした。暴風と深いラフ、高速グリーンの超難コースを無理に回って悩みを深めるよりも、いいイメージを持って大会に臨む作戦だ。

 開幕前日のドライビングレンジ。池田は「世界の青木功」に、あろうことか個人レッスンを行っていた。「試合では、そんなにゆったりドライバー振れないでしょ?

 きっとオレと同じ、こっちのシャフトの方がいいよ!」。スイングのリズムに合わせ、シャフトのフィッティングもサービス。すると15ヤード以上も飛距離が伸びた上に、強風に負けない球質になった。

 「70歳にして、オレにコーチができたな。勇太コーチ、ありがとうございました」。冗談めかしてとはいえ、こわもての大先輩青木から最敬礼も受けた。実力に加え、人柄も青木に愛される池田は、家族ぐるみで親しく付き合う。6日にも、池田の母ゆみさんと青木夫妻が食事会もした。その流れで、翌日には青木がキヤノンオープンの会場を訪れ、優勝直後の池田とハグして祝う場面もあった。

 「教えた後、球がギューンといっとったろ?

 シャフト替えたドライバーも、気に入ってくれたな」。得意のドヤ顔を見せた池田だが、自らは予定していた練習ラウンドどころか、1発も球を打たなかった。アイアンなどのグリップを交換し、ウエッジのライ角、ロフトを微調整すると「今日はこれでいいだろ!」と早々に会場を後にした。

 「こんなに風が強くて、ラフも深いところで何回もラウンドしたら、開幕前に考えが煮詰まっちまう。現に昨日のプロアマで、すでに煮詰まりつつあったからな」。キヤノンオープンで優勝した7日夜は、千葉県内で深夜まで祝勝会をしたが、翌8日早朝には空路で会場入り。多くの選手に先んじて、コースを入念にチェックしていた。

 ショットも引き続き好調で、暴風や深いラフへの対応も得意。となれば後は、気持ちよく試合に臨むのみ。一見奇策に思えるが、勇太にはこれが優勝への最良の道なのだ。【塩畑大輔】