男子ゴルフの石川遼(22=CASIO)が、久々に「優勝」を視野に入れた。31日に上海で開幕する米ツアー次戦、HSBCチャンピオンズに向け、埼玉県内で調整。今季2戦目のシュライナーズホスピタル・オープンで2位に入るなど、昨季の不振を抜け出したことで、従来の「シード権確保」から「ツアー戦優勝」に向け、目標を上方修正した。今日27日に中国に向け出発する。

 埼玉県内の練習場。沈みゆく夕日の光を頼りに、石川は黙々とパット練習を繰り返した。「タイガーは上りのパットでも、下りのパットでも、まったく同じストロークをするんですよね。あれが理想です」。起伏が大きい特設グリーンで、難しいラインを選んでは、理想のストロークを求めて球を転がし続けた。

 「優勝するために、今一番レベルアップが必要なのがパッティングだと思う」と石川。昨季はトップ10わずか1回、12試合で予選落ちと苦しんだ。その中でまったく聞かれなくなっていた「優勝」の2文字を、久々に自ら口にした。「言われてみれば、そうかもしれません。先週2位に入ったことで、優勝の可能性とか、優勝するのに足りないものが見えた」とうなずく。

 昨季下部ツアー入れ替え戦、開幕2戦と、優勝に近い位置でプレーしてきた。「HSBCチャンピオンズには、開幕2試合にいなかったトップクラスの選手が出てくる。その中でどれだけできるかで、優勝と自分の距離をはかることができると思う」。来季のシード権を早くも“当確”させられる、5位前後を目標にする一方で、今後のツアーVの可能性をはかる考えだ。

 欧米の選手との体格差を「機械のようなフォーム」で埋めたいと練習を重ねる。パットについても「タイガーは肩でストロークするのに、頭がまったく動かない。ああいう機械のような動きをしたい」。ロンドン五輪200メートル背泳ぎ銀メダリストの入江陵介が、額にペットボトルを乗せて泳ぐことを例に「あれくらいの練習法を考えないと、タイガーのようにはなれない」と考えをめぐらせる。

 入江のフォームや、大リーグレッドソックスの上原の制球など、世界で活躍する日本人選手の技量は「精密機械」とたとえられてきた。「ショットのスイングは、だいぶムダがなくなってきたと思う」と石川。先達に習い、精密機械になりきることで、米ツアーでの優勝を狙う。【塩畑大輔】