<男子ゴルフ:日本オープン選手権>◇最終日◇19日◇千葉・千葉CC梅郷C(7081ヤード、パー70)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 池田勇太(28=日清食品)が初めて「ゴルファー日本一」の称号を勝ち取った。首位から出て2バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの72で回り、通算10アンダー270で初制覇した。今季ツアー初勝利で、09年の日本プロ選手権に続く国内メジャー2勝目を挙げた。通算12勝のうち8勝が9月以降と“秋男”らしい強さを発揮。これを弾みに賞金王、さらには念願の米ツアー参戦を狙う考えも明かした。

 1万人のギャラリーが、千両役者に惜しみない拍手を送った。18番パー5。ティーグラウンドに上がった池田は、万雷の声援に包まれた。「勇太、頑張れ!」。快く笑顔で、手を上げて応えると、再び声援が上がる。国内ツアーでは非常に珍しい光景だった。

 みんな「強い勇太」を待っていた。優勝の瞬間の大歓声も、これまでの大会と比べてケタ外れ。「ずっと応援に背中を押され続けて、18ホールがすごく短く感じたよ」。ファン離れが懸念される国内男子ツアーにも、潜在的な集客力があることを、選手会長自ら証明してみせた。

 2位と3打差で終盤を迎えたが、最後に試練が待っていた。16番パー3(204ヤード)では、第1打を「力が入った」と5番アイアンでグリーン奥のバンカーに外し、ダブルボギーとした。直後の17番パー4は第2打がピンまで199ヤード残り、再び5番アイアンを持った。今度は「左からの風にぶつけて、カットして打てば、今度はオーバーしない」とフルスイング。ピン右手前7メートルに運び「あれを打てるのは他におらんぜ」とどや顔を見せた。

 今季は開幕直後から、ケガが続いた。それを押して、ホスト大会の日本プロ選手権日清カップなどに強行出場したため、腰から左足首、左膝と“転移”が続き、完治が遠かった。先週まで平均パット数67位と、グリーン上でもスランプに陥った。順位が上がらず、観衆がほとんど来ない、インスタート組でのラウンドも続いた。

 しかし得意の秋を前にケガが回復。今週から新パターを採用し、パットの転がりも戻った。トンネルを抜けて、ついに優勝。スピーチでは「この大会には特別な思いがあった」と声を詰まらせる一幕もあった。

 この優勝で来季の全英オープンの出場権も獲得した。11年全米プロ以来4年ぶりにメジャーの舞台に立つ。そして「米ツアーでやるのは夢」とも語った。

 池田

 でもこっちで賞金王取って、鳴り物入りで行かないと面白くない。向こうでもミケルソンとか、40歳過ぎて活躍してる選手は多い。30歳くらいで準備を完了させて、向こうに行くってのも悪くないでしょ。

 だから日本一のタイトルにも満足せず、狙うは2週連続優勝。銀座のクラブ行きを我慢した1週間だったが、さらには恒例の大規模な祝勝会も延期した。万全の体調で、今週のホスト大会、ブリヂストン・オープンを勝ちにいく。【塩畑大輔】

 ◆勇太の記録メモ

 20代で日本プロ選手権と日本オープンの2冠を達成したのは、尾崎将司(71年日本プロ、74年日本オープン)以来2人目。日本オープンでローアマ(最優秀アマ)受賞(03、07年)後に優勝したのは中嶋常幸、片山晋呉らに続き7人目。09年から6年連続でのツアー優勝は73年のツアー制導入以来、歴代11位の記録。歴代1位は尾崎将司の15年連続。

 ◆勇太の海外成績

 09年の全英オープンでメジャー初出場。10年にはメジャー4大会すべてに出場し、マスターズでは初出場ながら29位と大健闘した。11年はマスターズ、全英、全米プロの3大会に出場。全英オープンでは38位に終わったが、暴風雨の中でスコアを伸ばし、一時8位まで浮上した場面もあった。