<男子ゴルフ:ダンロップフェニックス>◇最終日◇23日◇宮崎・フェニックスCC(7027ヤード、パー71)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 松山英樹(22=LEXUS)が「過去最高の集中力」を発揮して国内通算6勝目を挙げた。ホストプロの重圧の中、一時は首位から陥落したが、17、18番と連続バーディーで通算15アンダー269で岩田寛(33)と並び、プレーオフ1ホール目で勝負を決めた。今季の国内ツアーの出場義務試合数を満たさず、来季のシード資格が停止される見通しだったが、今季2戦目で優勝し、2年シードを獲得した。

 優勝会見。松山は冒頭から「めっちゃうれしいです!」と言葉を弾ませた。ホストプロにして、米ツアー帰りの優勝候補筆頭。優勝がノルマとされる状況は、怪物にとっても重圧だった。「最近こんなにうれしいことはなかった。こんなに集中して4日間回れたことはない。米ツアーで優勝した時以上だと思う」。ようやく緊張から解き放たれ、笑顔がはじけた。

 どうしても勝ちたい。その一念で重圧にあらがい、プレーオフに残った。単独首位で出たが、珍しくアプローチのミスを頻発。4つもボギーをたたいた。「考えられないミス。15、16番のしょうもない連続ボギーで本当に苦しくなった」。首位の岩田に2打ビハインド。残り2ホール連続バーディーが必要な状況で、逆に肝が据わった。

 17番パー3は「久々に最高のパットができた」と6メートルを沈めてバーディーを挙げた。迎えた最終18番パー5。残り235ヤードの第2打は「良いショットじゃなかった」が、執念でグリーン手前のバンカーをぎりぎりで越え、かじりつくように左手前のカラーに乗った。5メートルのイーグルチャンス。プレーオフ進出を決定づけ、決めれば一気に逆転優勝の場面をつくった。

 まだ重圧はあった。グリーン上で松山は、すがるように天を仰いで何かを唱えた。口の動きは「入ってくれ、頼むから」と言っているように見えた。パットはラインに乗ったが、30センチ届かず。「オーバーしすぎて、返しのパットが難しくならないように、プレーオフを意識して打った。でもまさかショートするとは」と苦笑いで振り返った。

 それでもプレーオフに入ると、勝ちたい執念が重圧を完全に上回った。1ホール目のティーグラウンド。松山に握手を求めに歩み寄った岩田の表情が、一瞬で凍り付いた。同じ東北福祉大出身で、最も敬愛する先輩を前にしながら、笑顔どころか鬼のような表情を浮かべていたのだ。

 松山

 寛さんは一番お世話になっている先輩。でもちょっとでも隙をみせたら負けると思った。態度が悪いと思われても、それは仕方ないと思う。それくらいの気持ちがなければ勝てなかった。

 岩田が第1打を林に打ち込み、トラブルとなったことで、勝負はあっさりとついた。立ち合い勝ちだったかもしれない。松山がかつてない重圧に打ち勝ち、持ち前の勝負強さに磨きをかけた。【塩畑大輔】