<男子ゴルフ:日本シリーズJTカップ>◇第3日◇6日◇東京よみうりCC(7023ヤード、パー70)◇賞金総額1億3000万円(優勝4000万円)

 賞金ランク首位の小田孔明(36=フリー)が“最後の試練”を乗り越え、悲願の賞金王を獲得する。ランク2位の藤田寛之(45)らが順位を落とし、初の賞金王が濃厚な状況となったが、重圧で本来のプレーができず。2バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの72とスコアを落とし、通算2アンダー208で9位に後退した。07、13年の日本オープンなど、頂点を目の前にしながら惜敗を重ねてきた男が、重圧に打ち勝って今度こそ日本一になる。

 ゴルフの神様が試練を準備していた。18番パー3。小田孔は第1打を右手前のバンカーに落とした。砂からボールの一部がのぞくだけの目玉状態。スピンが強く、球質も強い分、湿った砂にも深く突き刺さった。

 第2打のバンカーショットは、出すだけで精いっぱい。第3打のアプローチも、グリーン手前方向への強い下り傾斜に阻まれ、カップ左1・5メートルまで転がり落ちた。パットも決まらず、痛恨のダブルボギー。観衆のため息に包まれながら、グリーンを下りた。

 「難しいですよ。ただの優勝争いなら、もっと普通のゴルフができるかもしれないけど」。前半の6番パー5までに2つ伸ばすも、本来のショット精度が影を潜め、パーオンはしてもピンには絡まなかった。悪くはないが、伸ばせもしない。次第に黒い雨雲がかかった天気のように、重苦しい展開にあえぎつづけた。

 賞金ランク2~4位の藤田、近藤、岩田は、逆転賞金王には優勝が条件。有利な状況で迎えた最終戦だったが、重圧はあった。前夜も深夜2時に目が覚めた。たばこをゆっくりとふかして就寝したが、予定より2時間早い午前5時すぎに起床してしまった。

 07年の日本オープン選手権では、単独首位で迎えた最終日に80をたたいて敗れた。リベンジを期した13年の同選手権では、同じく単独首位で第3日を終えると「死ぬ気で勝つ」と涙をためながら語った。しかし小林に逆転を許し、再び日本一のタイトルを逃した。

 今度こそ頂点に-。この日も青木功からのテレビ中継インタビューでは、感情が込み上げ言葉に詰まる場面があった。「他の3人も僕と同じ苦しみをしている。彼らのスコアを見れば分かる。有利なはずの自分がスコアを落とすのは、まだまだということ。明日は5アンダーくらいで回って、笑って賞金王をとりたい」。重圧を乗り越え、日本一のショットメーカーの本領発揮で賞金王に花を添える。【塩畑大輔】

 ◆賞金王の条件

 賞金トップの小田孔、約1552万円差で追う賞金2位の藤田、約2560万円差で同3位の近藤と、約3415万円差で同4位の岩田の4人に賞金王の可能性がある。小田孔は藤田、近藤、岩田が優勝以外なら賞金王に決まる。藤田は優勝なら賞金王。近藤は優勝し、かつ小田孔が2位タイ以下なら賞金王。岩田は優勝し、かつ小田孔が4位タイ以下なら賞金王となる。