明日11月1日付で退任するラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC、55)が30日、都内の日本記者クラブで会見し、最後の提言をした。W杯イングランド大会3勝の勢いを持続するため、エリート育成と一貫指導のシステム構築の必要性を強調。大学中心の現状に危機感を示し、根底から変革しなければ19年のW杯日本大会の8強は不可能と断じた。後任のHCには国際経験が豊かな人物を推奨し、日本人HCには否定的だった。

 日本ラグビー躍進の喜びより、危機感が上回った。退任前最後の会見。ジョーンズHCは13日のW杯帰国会見に続き、強豪国では当たり前のことを訴えた。「才能ある16~18歳の30人の選手を選ぶ。体力強化を含めた一貫指導を行う。国際試合も定期的に経験させる」と一貫したエリート育成システムの必要性を強調した。

 国内の高校、大学、社会人は目の前のリーグ、大会の勝負が第一。エリートを育成する土壌はない。ジョーンズHCは「大学ラグビーだけでは国際的な人材は出てこない」と、大学主体の現状に不満を述べ、対照的な例に世界ランク1位ニュージーランド代表を挙げた。「人口約500万人の国がなぜ強いか。国民を挙げて代表を育成しているから。根底を変えない限り、19年日本大会の8強は難しい」と言い切った。

 日本人を含め多数の候補者がリストアップされた後任HCについても持論を展開した。「もし自分が日本人だったら、海外に出向き(世界最高峰リーグの)スーパーラグビー、(英国の)プレミア、フランスリーグなどで修行し、トップレベルの指導論を学ぶ。そして英語を勉強する。まず日本人コーチは学ばなければならない」。日本人のHC就任は時期尚早と暗に主張した。

 4年前の就任時「国民が誇りを持つ日本代表チームにしたい」と宣言した。W杯3勝で、歴史は変わった。今や「五郎丸ポーズ」を知らない人はいないほどのブームになった。来季からスーパーラグビーのストーマーズ(南アフリカ)HCに就任する。日系人で妻も日本人。日本への愛着は深いが、復帰にはくぎを刺すように「エリート選手の育成システムができること」を条件とした。日本ラグビー界の抜本的な改革がない限り、もう日本でエディーHCの姿を見ることはない。【田口潤】

 ◆ジョーンズHCの後任 日本協会は12月の理事会をめどに決める予定。坂本専務理事は、後任の条件を「日本に対する見識を持っている人」とし、当初はヤマハ発動機・清宮監督ら日本人10人程度を含む約60人をリストアップしたと説明。平尾誠二理事、薫田真広日本代表戦略室長ら6人が候補者の絞り込みを進めている。