昨季世界選手権銀メダルの宮原知子(17=大阪・関大高)が、大会連覇を果たした。SP首位からのフリーで139・59点。国際スケート連盟未公認ながら“自己新”の合計212・83点で優勝した。浅田真央(25=中京大)に3連勝して、世界選手権(来年3月、ボストン)での連続メダルが視野に入った。SP5位の浅田は巻き返して3位。世界選手権代表に、女子は宮原、浅田、本郷理華(19=邦和スポーツランド)が選ばれた。

 冒頭の3連続ジャンプが乱れた。「あーって感じ」と宮原。だが練習で培った技術と心は乱れなかった。「できる」と自分に言い聞かせて滑りきった。樋口らジュニア世代、そして浅田を抑えて大会連覇。「強い選手がたくさんいる中で、また優勝できてすごくうれしい。もう少し点を出せれば、よかった。もっともっと自分に自信や迫力をつけて今以上の演技をしたい」と言った。

 4歳から6歳まで米国で過ごした。「帰国した時、年上の人とはしゃべれなかった。周りからは『英語しか分からない』と思われていたかも」。控えめな性格で笑顔が苦手。今でもリンクを下りると練習場の隅で弁当をほおばる。浜田コーチは「普段は今までと変わらずオーラはない。でも大観衆の前でも自分の演技ができるようになった」。

 11月にNHK杯初優勝。家族とイタリア料理店でお祝いした。その席で父亮さん(52)は「自信がついてきた」と娘の変化を感じた。同コーチは「去年は前を追って追って勝てたらいいね、だった。今年(女王として)迎え撃って勝てるのは心の成長」と褒めた。

 限界まで自分を追い込む。今年の夏合宿ではスケートの基礎を猛特訓。1日5時間はリンクで過ごす宮原がある日、珍しく集合時間に遅れた。同コーチは「知子が起きられないなら他の選手も無理」と休日にしたという。技の習得に時間はかかるが、練習で靴を履く際も本番の時間を想定して準備するなど手間を惜しまない。「普通の子でも努力でここまでくるんやな」と同コーチ。父は「いわゆる球技が得意な子ではなかった。ただ1度できたことができなくなる、ということはないです」。競技者なら誰でも憧れる才能がある。

 日本人で浅田に3連勝したのは安藤美姫以来2人目。NHK杯で記録した国際スケート連盟公認の200点台も浅田、安藤に続く日本人3人目だった。頂点に向かう歩みは遅くとも下ることはない。宮原は「今回は悔しい部分も少しあった。世界選手権でしっかり自分の実力が出せるように頑張りたい」。17歳が、世界女王に輝いた2人に着実に近づいている。【益田一弘】

 ◆宮原の昨季全日本選手権と世界選手権 全日本選手権はSP2位から逆転し、195・60点で初優勝。初出場の世界選手権はSP3位から、フリーをほぼミスなく滑り193・60点で銀メダルを獲得した。

<宮原知子(みやはら・さとこ)アラカルト>

 ◆生まれ 1998年(平10)3月26日、京都府生まれ。両親は医者で、4~6歳11カ月まで米ヒューストンで過ごす。

 ◆サイズ 身長150センチ。今年で2センチ伸びた。

 ◆競技歴 米国のショッピングモールで初体験。「楽しかった」と始める。11年全日本ジュニアで圧勝。13~14年シーズンからシニア大会に参戦。昨年の全日本選手権では浅田真央と並ぶ16歳での初優勝。関大中から関大高に進み、現在は浜田美栄コーチに師事する。今年11月のNHK杯でGPシリーズ初優勝。

 ◆不器用 浜田コーチいわく「のみ込みは遅い」。最初はジャンプが一般的な左回転とは逆。帰国後にこつこつと2年かけて矯正。

 ◆真面目 練習中は一切無駄話をせずに動き回る。

 ◆秀才 英語のテストで、学校で1番になったこともある。国際大会の会見では英語で受け答え。

 ◆趣味 料理。今年7月からお弁当のおかずを作り置き。毎朝、昼と夜の2食分のお弁当をもって、練習場にいく。ゆでた野菜が中心で、揚げ物は避ける。