男子で五輪2連覇の羽生結弦(23=ANA)が、SP今季世界最高の106・69点で、12-13年スケートアメリカ以来6季ぶりにGP初戦で首位発進した。9月の初戦オータム・クラシックから演技構成を変更。連続ジャンプを後半に入れた攻めの演技で、GP初戦初勝利へ前進した。

王者の貫禄だった。最後のジャンプだった4回転-3回転のトーループ。羽生は2つめのジャンプで腰が落ちかけたが、ぐっと耐えて体勢を持ち直した。これですべてのジャンプを着氷。今季初実戦のオータム・クラシックで0点になったスピンもきっちりとクリア。SP今季世界最高となる106・69点をマークした。

初戦のオータムクラシックを終えると、羽生はすぐにある人にメールを送った。相手は信頼する音響デザイナー矢野桂一氏。SP「秋によせて」の内容を変えるためだった。SPでは1分25秒を過ぎた時点からジャンプの得点が1・1倍になる。流れを重視し3つのジャンプを続けて跳ぶのはそのままに、得点アップのため、最後の4回転-3回転トーループを少し後にずらすよう編曲を頼んだ。

音には徹底的にこだわる。五輪フリーで使用した「SEIMEI」でも、羽生は矢野氏に「無理なことを言っているのは承知の上ですが…」と言葉を置いたうえで、冒頭に自分の息を入れる、イナバウアーの箇所で金切り音を入れるなど細かく指示。33度も作り直して完成形に至った。矢野氏は「今回も(指示は)相変わらず細かいです。腕が試されます」。10月はじめ、数秒単位の調整を加えた新バージョンを受け取り、それに合わせて準備してきた。

GP初戦は、シニアデビューから8季連続で優勝を逃してきた。しかも、ソチ五輪金メダルの後の14-15年中国杯では衝突事故で流血するなど、嫌なイメージも残る。ヘルシンキは17年世界選手権でフリーの歴代最高点を出した場所。今季、中国杯から代替開催となった縁起のいい地で、GPのジンクスを破る。