【イエーテボリ(スウェーデン)22日=菅家大輔】日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア強化部長(46)は、来年3月の世界選手権、10年バンクーバー五輪での金メダル取りのため、高橋大輔(22)に「2度の4回転ジャンプの確実性アップ」を厳命した。世界選手権の男子フリーを終え、合計220・11点で4位と惨敗した日本男子のエースの課題を指摘。優勝したジェフリー・バトル(25=カナダ)らの間で「4回転論争」も勃発(ぼっぱつ)する中、同部長は世界一奪取のためには必須であると明言した。

 高橋の演技を見た伊東強化部長は、世界一になるための課題を即座に突きつけた。「(2度の)4回転ジャンプを確実に跳ばないと、来年の世界選手権やバンクーバー五輪では厳しい」と断言した。

 高橋はフリーで冒頭の4回転トーループは成功したが、続く2連続ジャンプの前半の4回転トーループで転倒。ペースを崩し、失速した。ジャンプが不調で、モロゾフ・コーチから4回転を1度に減らす案を提示されながら強行。ミスの動揺からジャンプの跳びすぎ違反を犯すなど、最悪の結果となった。そんな中、唯一の収穫を「この調子で4回転を1本決められたことは大きい」とした。

 試合前の演技構成表にはジュベールが3度、ランビエルと高橋が2度、ウエアが1度の4回転ジャンプを申告。伊東強化部長は世界の流れから「世界のトップは全員4回転の練習をしている。この日は4回転を跳ぶ上位の選手が失敗したから、4回転を跳ばないバトルが勝った。上位が完ぺきな演技をした場合、4回転を跳ばなければ勝てない」と強調した。

 メダリスト会見でも「4回転論争」が起きた。2位のジュベールが優勝したバトルを非難。「バトルには失望した。我々は4回転に挑戦したが、彼は跳ばなかった」。バトルは「スピンやステップも含めてフィギュアだ」と反論した。今後も論争は続きそうだ。

 現実的に高橋が得意のトーループの場合、3回転の基礎点が4・00点なのに対し、4回転は9・00点。年々進化するフィギュア界で「0・1点の勝負」(同部長)の戦いを今後勝ち抜くには、4回転の確実性が不可欠ということだ。高橋は2月の4大陸選手権で2度の4回転を完ぺきに成功させているだけに、期待を背負う。「世界一」への道筋が浮き彫りになった敗戦でもあった。