軍事訓練から、本場所へ突入-。グルジア出身の平幕黒海(28=追手風)栃ノ心(21=春日野)幕下臥牙丸(22=木瀬)の3力士が、軍事訓練を受けるために母国に帰国していたことが6月30日、分かった。3力士とも約1カ月の訓練を終え、一両日中に再来日の予定だが、名古屋場所(12日初日、愛知県体育館)まで時間は少なく、異例の日程で土俵に立つことになりそうだ。

 裸一貫で勝負する力士が、武器を持って訓練を受けていた。この日、名古屋場所の会場の愛知県体育館で行われた力士会を欠席した黒海、栃ノ心と幕下の臥牙丸の3力士は、母国でマゲをつけたまま、戦闘服に身を包んでいた。

 グルジア大使館によると、「男性は40歳までに約1カ月の軍事訓練を受ける義務がある」といい、同国出身の3力士も同国の軍から招集されたという。3力士は日本相撲協会に海外渡航届を提出の上、6月初旬から帰国しており、一両日中に再来日の予定だ。

 モンゴルにも兵役義務はあるが、朝青龍ら力士はいずれも免除されてきた。韓国出身の春日王も入門前に受けた徴兵検査でひざの故障が発覚し、免除。ロシア出身力士も招集されておらず、外国出身力士が軍事訓練で帰国したのは極めて異例だ。

 相撲界では、力士は番付発表以降は開催地でけいこに専念することが常識とされるが、栃ノ心の師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)も「事情が事情だけに仕方ない。戻ってきたら急いで調整させないといけない」という。追手風部屋付きの中川親方(元幕内旭豊)も黒海について「長く相撲を取っていない上、場所も近いのでどうしても不安は残る」と心配する。

 グルジアはロシアとの紛争を抱えており、昨年8月にはサーカシビリ大統領が「予備役を含む兵力を総動員する」と、国家総動員令を出す事態にもなった。グルジア大使館では「力士が徴兵されることはない」としているが、母国で切迫した軍事に触れた3力士が、調整不足の中、本業の相撲に集中できるかどうか。【柳田通斉】