国技の危機だ!

 4日、東京・両国国技館で行われた横綱審議委員会(横審)秋場所けいこ総見で、低調な内容に委員らから痛烈な批判が噴出した。両横綱はスタミナが続かず横綱朝青龍(28=高砂)がわずか5番、横綱白鵬(24=宮城野)も11番で切り上げ、けいこ不足を露呈。代わりに活気をもたらす力士もいなかった。内館牧子委員は「今までで最低。不愉快」と嫌悪感を示し、「(相撲界は)自民党と同じで甘えている」と指摘。ほかの委員らも失望感をにじませた。13日の秋場所初日まで残り1週間。力士たちは気迫を取り戻せるか。

 朝青龍が肩で息をして土俵に背を向けた。支度部屋に入ると、両手を腰に「あー。くそーっ」と叫んだ。午前10時5分に土俵に入ったが、日馬富士と3番、琴欧洲と2番取ると息が上がった。同9分にはそれ以上のけいこを放棄してしまった。「(右ひざの故障で)しこも踏めないと思っていたけど、(力士に)触ってみたくなった。(最初から)2、3番取れるかなと思っていた」と釈明したが、けいこ不足によるスタミナ切れは明らかだった。

 白鵬も精彩を欠いた。大関陣らと11番取ったが、8番取った後で息が上がり、朝青龍とバトンタッチ。先輩横綱が約4分で音を上げた後に千代大海と連続3番取ったが、土俵にいたのは合わせても10分足らず。本人は「10番以上はやろうと思っていたから」とノルマ達成を口にしたが、委員歴9年の内館委員は怒りをあらわにした。

 内館委員

 不愉快になってきました。朝青龍は色が白くなって体がぷよぷよだし、白鵬も息が上がるのが早すぎる。(両横綱とも)覇気がなさ過ぎます。私が見てきた総見で最低の内容。血圧が上がってしょうがない。自分の健康のためには早く(委員を)辞めた方がいいかもしれません。

 ふがいない両横綱の影響はほかの力士にも波及した。大関日馬富士は短時間で13番取ったが、期待の鶴竜、稀勢の里は11番止まり。場所が9日後に迫っているにもかかわらず、まるで巡業の延長のように激しさ、力強さに欠けたけいこ内容だった。

 内館委員

 こんな状況でも国技だから15日間国技館で興行できて、満員にもなる。結局、自民党と一緒でそれに甘えてあぐらをかいているんです。そのうち大変なことになる。閑古鳥が鳴くことにならないように、どぶ板とつじ立ちで選挙に勝った小沢一郎さんのような人が必要なんです。

 失望したのは内館委員だけではない。NHK解説者の元横綱北の富士勝昭氏も「大鵬さんが5人の大関を相手に3時間も4時間もけいこしていた時代が懐かしいよ。今は(横綱が)10分も持たないんだから。5番なんてけいこのうちに入らない。親方衆もただ見てないで叱咤(しった)激励しないと」。

 武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も両横綱について「もうひとつ気迫がなかった」と評した。しかし、けいこ後に両横綱に注意をすることはなかったという。「土俵の充実」が大前提の大相撲をけいこ不足の両横綱がリードしている現実。内館氏らの「警告」を相撲界はどうとらえるのか。【柳田通斉】