<大相撲九州場所>◇7日目◇21日◇福岡国際センター
東前頭9枚目の嘉風(27=尾車)が、平幕ただ1人の全勝を守った。翔天狼に土俵際まで押し込まれたが、徳俵に足をかけながら左へ回り込み送り倒し。初日から7連勝。朝青龍(29)白鵬(24)の両横綱とともにストレート勝ち越しに王手をかけた。大分出身の「ご当所力士」の奮闘に、今場所初めて満員御礼となった館内は大歓声。故郷と家族の応援を励みに「旋風」を巻き起こす。大関琴欧洲(26)と平幕栃ノ心(22)が1敗で追走。かど番の大関千代大海(33)は5敗目を喫した。
悲鳴を歓声に変えた。土俵際まで押し込まれた嘉風が徳俵で踏ん張り、スルリと左へ動く。危機一髪の状況をくぐり抜け、翔天狼のバックを取った。「負けたなあ、なんて思って、気付いたら横についてました。勝利の女神がついてますね」。空席が目立つ九州で、今場所初の満員御礼。幕内前半の主役は、全勝キープした大分出身力士だった。
これまで初日からの連勝は昨年九州場所の3が最長だった。自己記録を大きく更新して一気に勝ち越し王手。「さすがに欲が出てきて。2ケタまで伸ばしたい、とか。初日、2日目のような精神状態じゃないですね」。重圧を故郷の期待を励みに乗り越える。
実家は大分・佐伯市内で美容室を営む。邪馬台国の女王から取った「ひみこ美容室」は、なぜか場所中に客足が伸びない。母ムツヨさん(53)は説明する。「3時以降は全然です。私にゆっくり相撲を見せてやろうとしてるみたいで。『耳切られると困るから』とか言われますね」。一方で取組直後は、店と携帯電話が鳴りっぱなしだ。
不況のあおりを受け、創業26年目の「ひみこ」も、格安店に客が流れているという。ムツヨさんは「お客さんが来ないのは経営的には残念かもしれませんが、その気配りがうれしいです」と感謝する。8日目はバスをチャーターして、応援団が会場に駆けつける。
同郷の大関千代大海が元気なく、Jリーグ大分は降格や借金問題で揺れる。暗い話題が続く故郷に「ふるさとを盛り上げる材料が、自分になったらうれしいですね」。夜は5月に誕生した長女梨愛(りな)ちゃんとのテレビ電話でリフレッシュ。場所後に家族3人で里帰りする新米パパは「嘉風って前半すごかったなあ、と言われるのが一番悔しいですからね」と気合十分だ。【近間康隆】

