<大相撲秋場所>◇5日目◇16日◇両国国技館
満足感と不満の交じる52連勝だった。決まり手を聞いた横綱白鵬(25=宮城野)は、少しだけほおを膨らませた。「仏壇返しのイメージでしたけど、あれがすくい投げになるのかなあ。投げてないし、左を効かせてるのにね」。左上手を強烈に引いただけで、栃ノ心は腰から砕けた。1日に亡くなった元横綱初代若乃花が得意とした「呼び戻し(仏壇返し)」。97年春場所で貴乃花が剣晃に決めて以来となった大技を、節目で狙っていた。
怪力自慢の新鋭に対し、力と技を融合させた。踏み込みよく右を差し、相四つの栃ノ心と土俵中央で右四つがっぷり。「そのへんは流れだね」。まわしに届かないよう腰を伸ばして振り、右手で直接跳ね上げ、相手十分の左上手を切った。左上手を引き付けながら、右かいなを返して前に出る。158キロの体を揺さぶりながら、栃ノ心を崩した。
相撲はパワーじゃない。育ての親の熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)が力説する。「上半身の力は把瑠都らに、かなわない。でも前に出るのは腰を割る力。横綱はいなされても残るでしょ?
内転筋が強いから落ちない。相撲は腰ですから」。筋トレを避け、しこやてっぽうで鍛え上げた肉体は、本物の強さを持っている。
ついに、千代の富士が持つ昭和以降2位の「53連勝」に王手をかけた。同時にモンゴル相撲の横綱だった父ムンフバトさん(69)の「52連勝」に並んだ。「まずは今日、オヤジさんに並んだことですね。今日は今日、明日は明日の風が吹く」。激動の土俵で、力強く白星を重ねてきた白鵬。6日目の相手は琴奨菊だ。【近間康隆】

