<大相撲夏場所>◇8日目◇13日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(27=宮城野)が早くも3敗目を喫し、崖っぷちに立たされた。前日までに2大関を破って勢いに乗る関脇豪栄道(26=境川)に寄り切られた。初日の安美錦、7日目の豊響に続いて殊勲の勝ち星を献上した。横綱昇進以来、中日までに3敗するのは初めて。大関稀勢の里(25)、琴奨菊(28)、鶴竜(26)、平幕の2人も1敗を守った。

 白鵬が力なく土俵を割った。ここまで2大関を破っているとはいえ、過去13戦13勝だった豪栄道に簡単に寄り切られた。土俵際でまわり込まれると、あっさりともろ差しを許す。俵に足をかけての粘りも及ばず、よもやの3敗目だ。白鵬は「ついていけなかったね」と言ったきり、報道陣の質問に無言を貫いた。何を言っても言い訳になると思ったのかもしれないが、ショックの大きさを物語った。

 中日までで3敗は横綱昇進以来、初めてだ。初日と7日目の敗戦は詰めの甘さが招いたもの。白鵬も「相撲に勝って勝負に負けた」と内容は評価していた。だがこの日の負けは見せ場すら作れない完敗だった。2日目に突き指した左手の影響もあってか、左まわしを取ることも出来ていない。北の湖理事長(元横綱)は「白鵬はまさかの連敗だが、気持ちと体が合わず、足が地についていない。土俵際も下半身に粘りがなく、安定感がない。立ち合いはいいが、差しにいくのか、押しにいくのか」と首をひねる。「本人も思った通りでなく、どうしてかと思っているのでは」と心情を察した。この日、NHK相撲中継の解説だった貴乃花親方(元横綱)は「のびのびと相撲を取るしかない。開き直ると底力が出るもの」とエールを送るしかなかった。

 3敗目で優勝が遠のいただけでなく、休場さえもよぎる。だが宮城野親方(元幕内竹葉山)は「ケガがなければ出るでしょう」と言った。白鵬は取組を終えて宮城野部屋に戻ってからはスポンサーと食事を共にし、いつも通りVTRを入念にチェック。9日目への準備に余念はない。横綱在位29場所目で最大のピンチを迎えたが、残り7日間で地力を見せるしかない。【高橋悟史】

 ◆白鵬の敗戦データ

 中日までに3敗するのは、07年名古屋場所で横綱に昇進して以来、初めて。中日までに連敗したことが、大関時代の06年秋場所6、7日目以来、6年ぶりのこと。過去22回の優勝で星1つ差を逆転したケースはあるが、星2つ差を逆転した例はない。