今季から外野にコンバートされた高卒7年目・DeNA森敬斗(24)の現状について、特に守備に注目した。

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ファームの試合はお目当ての選手が出場するかどうかは、当日の運次第の側面がある。プロ入り時から注目していても、なかなかタイミングが合わない選手もいれば、どういうわけか深く見るチャンスに恵まれる選手もいる。森敬斗は、その典型だろう。

今季から外野にコンバートされている。昨年に右ひじのクリーニング手術を受けている。1軍のショートのレギュラー争いが激しくなり、出場機会を増やす狙いもあっての外野コンバートだと聞いていた。

俊敏で肩が強く、もちろん足もある。24年には主にショートで71試合に出場し、定位置確保にぐんと前進していた。それだけに、私としてはショート森をもっと見たかったな、というのが率直な感想だ。ただ、プロで生き残るためには理想ばかりを追うこともできない。出場の可能性を探り、新しいポジションにチャレンジすることは前向きなことだと受けとめていた。

そんな森に試練の場面がやってきた。6点リードの7回だった。先頭打者、右の鵜飼の打球は左中間寄りへの深い打球だった。センター森は背走して、背走して、グラブを伸ばす。打球はグラブに当たり、こぼれた。端的に表現すれば、あと少しの惜しい守備だった。

場面は移り、満塁から今度は左打者の能戸。今度は中越えの素晴らしい当たりだった。大飛球というよりも、飛球とライナーの中間くらいの球足の速い打球が森の頭上を襲う。森は判断良く、一気に背走した。私が見ていた印象では、打球の落下点と、森の脚力から到達しうる地点はほぼ同じに見えた。

スタンドの観客席に背中を見せながら、再び左手を目いっぱい伸ばす。打球はグラブにあたって、いや、グラブを弾くようにしてグラウンドに転がった。その瞬間、スタンドからは「あ~あ」とため息が漏れた。補足すると、打球が飛んだ瞬間、スタンドからは「捕って~」との声援も多かった。本当に惜しい、先ほどの鵜飼の打球よりも難しい打球で、あとわずかの差で捕球できなかった。

味方が打球処理して、いったん試合が途切れると、森はうつむいて、すぐに天を見上げた。走者一掃のタイムリースリーベースで、一挙にこの回4点を奪った。努めてフラットな視点から評価すれば、鵜飼の打球も、能戸の打球もヒット性だった。森の脚力と反応の良さで、あわやの場面に持ち込んだが、1軍でもソフトバンクの周東、中日岡林、そして阪神近本などのセンターだったなら、おそらく両打球とも好捕していただろう。

しかし、捕れなかった森のプレーは強く私の心に残った。内野手と外野手の違いは、ヒット性を好捕するのと抜かれてしまうのとでは、アウトか長打かという大きな差が生まれるリスクがある。一概に決め付けてものは言えないが、内野手ならば、チャレンジして捕れなかったとしても、よほど不運がなければ単打になる可能性が高い。

その点、外野手は特に走者を置いた場面は複数失点の可能性も考えながら、チャレンジするのか、無理にダイレクトキャッチに挑まず素早く中継に返すか、そこの判断が求められる。結論から言えば、森は2つの打球にトライしたことは正解だったと感じる。挑んだのだから、結果として捕らなければならないが、それでも、トライした判断は良かったと感じた。

今は球界ナンバーワンの外野手といえば周東となるだろう。俊足を生かし、冷静な判断と、球際での高い技術は他の追随を許さない。その周東は、今季も何度となく長打性の打球をジャンプして、あるいはジャンプしながらフェンスにぶつかりつつ好捕している。見た目には、ファンの心をつかむスリリングなプレーであり、バッテリーとしては心の底から感謝したい献身的なプレーだ。ゆえに、絶対的な信頼がある。「あの周東が捕れなければ…」、という最高の信頼と言えるだろう。

森のこの日の2つの打球へのトライは、惜しくも失敗に終わった。私なりに考えるなら、あのわずかの差を埋める可能性はいくつかある。私は捕手が専門であるから、細かい技術論をふりかざしたくない。捕手目線で言わせてもらうと、打球への反応、最短距離を走る脚力、ここは申し分ないだろう。

あの2つの打球、森のスピードがなければ、あれだけのスリリングな瞬間にまで持ち込むことはできなかったのではないか。私は率直にそう感じた。無難にフェンス際での処理に切り替えず、まさに一か八かチャレンジして、失敗して、森の肌感覚が何かをつかんだかもしれない。

特に能戸の打球には、最後の場面で、ジャンプするアイデアはあったか。ジャンプが選択肢にあるならば、背走しながら備えなければならない。踏み切るタイミングと、落下地点を本能的に探り、踏み切るタイミングが合えばやってみるのもひとつの方法だろう。

そして、ここは外野の専門家の領域になるだろうが、差し出すグラブの角度も、大切なファクターになると感じた。2つの打球は、いずれもボール1個分届いていなかった。グラブに触れているだけに、あと数センチだろう。その数センチは、森ならば詰めることが可能だと想像する。ヒット性を、グラブに当てるところまで追いすがった部分に焦点を当てれば、森の守備範囲はまだ成長過程であると見ることもできる。

1イニングで、こんな際どい打球が2球も飛ぶことは珍しい。そこを目の当たりにしたことはラッキーだった。それも、好捕したスーパープレーよりも、あとわずか及ばずで、森からすれば悔しい場面をきっちり見届けられたのは、印象深かった。

6年前、私がファーム・リポートを始めたころ、2020年10月だったと思う。ファームでショートを守っていた森が、中前に抜ける打球に飛び込まなかったことを、私は厳しく批判する記事を書いた。今も覚えている。

それから月日は流れ、森がチャレンジするポジションはセンターに移った。そして1軍昇格に挑む立場として、高卒プロ7年目はもがいている。ただ、あの6年前と決定的に違うのは、失敗をものともせずに打球にチャージしたアグレッシブさだった。

何をいまごろ…、とご指摘するファンの方もいるかもしれないが、その激しくチャージする気持ちは常にプロは持っていなければならない。ポジションが変わっても、そこは不変でなければ。そこをあきらめるようになったら、それはプロ生活の終わりが近いことを意味する。

ボールを落としてなお、何とか打球に追いすがろうとする森敬斗の7年目は、熱く感じた。この数センチ、森ならばやがて詰めるだろうと、そんな思いを抱きながら帰路のハンドルを握った。(日刊スポーツ評論家)