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ヨシネーのひとりごと

ヨシネーのひとりごと

◆保坂淑子(ほさか・よしこ) 秋田県生まれ。フリーライター、エディター。2017年まで、日刊スポーツ出版社刊「プロ野球ai」デスク、「輝け甲子園の星」の記者を務める。“ヨシネー”の愛称で連載を担当した。甲子園取材は2019年で春20回、夏25回。著書に「監督心」、「主将心」(実業之日本社)「東浜巨 野球日誌が語る22年」(小学館)など。

新生・駒大苫小牧の新しい1ページ

[2014年1月27日11時49分]

 はじめまして! ヨシネーこと、フリーライターの保坂淑子です。今日から、日刊スポーツでブログを書かせていただくことになりました! 選手の素顔や本音、取材こぼれ話などなど…お伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

 さて、いよいよセンバツ出場校が発表になりましたね!

 私も、今回の出場校をいくつか取材をさせていただきました。その中でも、印象的だったのは、9年ぶりの選抜出場を決めた駒大苫小牧です。駒大苫小牧との出会いは、04年にさかのぼります。現在の佐々木孝介監督が、主将として初優勝を果たしたときでした。佐々木監督とも、それ以来のお付き合いになります。監督に就任してからも、何度とお話を伺ってきましたが、今年の佐々木監督は、今までとちょっと違いました。

 「旗を獲りたい。選手たちにもそう言っています」

 そう、まっすぐ前を向いて話してくれました。

 これまでも、いい指導をしているのにいつも最後には「いや、やっぱりダメですね…」と下を向いてしまいます。結果が出ていないということ。それは、この指導が正しいのか、ダメなのかがわからない。自分の指導を実証するものがない。「本当は何か」を手探りをしている中で、いやがおうでも周りからは、「初優勝のキャプテン」「連覇の駒大苫小牧」と注目の目を向けられる。4季連続で決勝敗退。試合後、客席からは「辞めてしまえ!」と心ないヤジを飛ばされたこともありました。それだけに、佐々木監督には、連覇を果たした「駒大苫小牧」の監督の重さをひしひしと感じていたのです。

 でも、今回は違いました。実に堂々とした言葉でした。

 「そのきっかけをくれたのは、去年の3年生だったんです」

 2012年、監督に就任3年目の秋。新チームはそれまでになく、ひたむきに一生懸命に取り組む選手たちでした。

 「自分たちは下手くそだってわかっていて、新チームになってから練習はもちろん、生活面まで徹底できる選手たちでした」

 朝は自分たちで朝、早く起きてゴミ拾い。遠征先に行っても生活パターンは変えない。練習量もすごい。それがあれよあれよという間にその年の秋の全道大会決勝へ。

 「負けてしまいましたが、僕もこんなに成長するんだって楽しくってね。冬も練習の手を抜かずに春は優勝。これは、甲子園に行ける。そんな手ごたえを感じていました」

 しかし、夏の決勝で北照に敗戦。

 「悔しくて悔しくて。初めて選手たちの前で泣きました」

 弱小だった選手たちがここまで上り詰めた。選手たちには何の落ち度も見当たらない。ならば、敗戦の原因は自分にあるはず。佐々木監督は自らを見つめ直し、就任4年目にして初めて敗戦のDVDを見直しました。

 初めて外から見る自分。その姿に愕然としました。

 「選手は必至に相手に対してぶつかっているのに、自分だけドンと偉そうに立っているじゃないですか」

 ――実は、「連覇の駒大苫小牧」を一番意識していたのは、自分自身ではなかったか――

 「もちろん、あの輝かしい時代があったからこそ、今の自分がいる。引き継ぎたいものはあるし、そうでなければいけない。でも、今の自分はそれがじゃまをしている」

 自分のチームを作りたい。そう思っていたのに、気が付けば、自分が向き合っていたのは「連覇の駒大苫小牧」。今、自分がやらなくてはいけないのは、目の前の選手たちと向き合い志を同じにして戦うこと。そして、誰のためでもない、選手たちのために勝ちたい、と。

 それまであと少しで届かかなかった優勝。昨年秋の全道大会優勝は、3年生が後押ししてくれた一歩。そして、佐々木監督にとって、この優勝は、変わるきっかけを作ってくれた3年生への恩返しでした。

 もちろん、私は昨年のチームを取材したことはないのですが、先日、取材に行ったとき、グラウンド整備をしていたのはちょっぴり髪が伸びた3年生。そしてすれ違うたびに、大きな声で元気よく挨拶をしてくれました。そっか、この3年生が今のチームの基礎を作ったんだね。佐々木監督の3年生への思いが、ほんのちょっとだけわかった気がしました。

 今、佐々木監督と選手は心を1つにして春に向かっています。だから――どうか、「優勝キャプテン」「連覇の駒大苫小牧」という色眼鏡をちょっと外して、今年の駒大苫小牧をあなたのその目で見てください。そこには、青年監督と選手が1勝をつかむために、懸命に野球に励む姿があるはず。勝っても負けても…それが、新生、駒大苫小牧の新しい1ページです!

 さて。日刊スポーツ出版社編集部は、輝け甲子園の星の星 早春号(2月1日発売予定)の取材、編集作業がが急ピッチで進んでいます! 編集部、ライターのみんなは、最後の追い込みに突入! もうひと踏ん張り…がんばるぞ~!

駒大苫小牧と言えば、「ナンバーワン」のポーズ。歴史は受け継がれています。(撮影・真崎貴夫)

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