プロ12球団が注目する強肩強打で主将の秀岳館・九鬼隆平捕手(3年)が、熊本だけでなく夏甲子園での「恩返しV」を誓った。4月中旬の熊本地震のボランティア活動を通じて「野球ができることへの感謝」を再認識。センバツ4強の悔しさをバネに狙う全国制覇を、プロ入りの弾みにする。

 秀岳館の九鬼が熊本地震の苦難を乗り越え全国Vを目指す。4月中旬の震災の影響もあり、5月の九州大会は初戦敗退。「大事な時期にまともな練習ができず公式戦も多くなくなり不安があった」。しかし負けるわけにはいかなかった。深夜0時過ぎまでの猛練習をこなし、6月の天理との練習試合では高校通算21本塁打を記録した。センバツでできなかった「全国優勝したい」という気持ちに拍車がかかった。

 スイング速度を上げるため1日最大1500スイング。センバツで痛めた右人さし指の影響で二塁送球などスローイングはまだ万全ではないが、体幹を鍛え直した。5月下旬にスポーツメーカーが行った全国数千人の球児を対象にした身体測定8種で、太もも裏や背中の筋力が1位、30メートル走も4位と、ほぼトップクラス。センバツの悔しさをバネに積み重ねた努力が実を結び、3年間の集大成へ「結果を残しプロに行きたい」と燃えている。

 地震は九鬼を精神的にも強くした。避難所で清掃のボランティア活動を行って思ったことがあった。「野球ができることに感謝し練習や試合を行っていかなければいけない。今まで当たり前に野球ができていたことが当たり前と思ってはいけないと思いました」。大阪出身の九鬼にとって、大きく成長させてくれた第2のふるさと「熊本」。感謝の気持ちは、全国制覇という恩返しで表す。【菊川光一】

 ◆九鬼隆平(くき・りゅうへい)1998年(平10)9月5日、大阪府生まれ。野球は小5で始める。中学でオール枚方ボーイズに入り3年時に全国5冠。秀岳館では1年夏からベンチ入り、2年秋から正捕手で4番。父義典氏は、池田(徳島)でセンバツ優勝、社会人野球の松下電器(現パナソニック)でプレー。180センチ、82キロ、右投げ右打ち。