静岡が、浜松商との伝統校対決を逆転サヨナラ勝ちで制し、8強入りを決めた。先発の斉藤颯斗投手(2年)が、9回を6安打2失点。1点を追う9回裏に同点とし、1死三塁から9番樋口裕紀内野手(2年)が中越えにサヨナラ打を放った。

樋口の打球が中堅手の頭上を越えると、静岡の選手たちがベンチを飛び出した。劇的な逆転サヨナラ勝ち。9回を投げ抜いた斉藤颯も歓喜の輪に入り、仲間と喜びを分かちあった。

9回表2死、斉藤颯は浜松商の6番近藤健生外野手(2年)を迎え、グッと気を引き締めた。2回表、同じように2死を取って対した近藤に、本塁打を打たれているからだ。「ここで3人で終えれば、流れが来る」と考えた左腕は、キレのある直球で近藤を詰まらせ、遊飛に打ち取った。目論見通り、直後の攻撃で同点に追いつくと、無死二塁で打席が回ってきた。「練習通りにやれました」。犠打で走者を三塁に送り、樋口のサヨナラ打につなげた。

静岡商との中部地区大会初戦に先発した斉藤颯は、1回を持たずに4失点で降板。同校は、24年ぶりの初戦黒星を喫した。斉藤颯は前日に腰を痛めていたが、「このぐらいなら大丈夫」と登板。不本意な投球をした上に、腰の状態を悪化させた。以降は治療を優先したが、8月下旬、横浜との練習試合に先発。1回に4失点も2回からの3イニングを無失点に抑え、本来の感覚を取り戻していた。

この日は、自己最速タイ134キロの直球を軸に、スライダー、チェンジアップ、カーブを織り交ぜ、相手に的を絞らせなかった。栗林俊輔監督(46)からは「最高の投球をしてくれた」とたたえられ、殊勲の樋口にも「颯斗のおかげで勝てた試合」と言わしめた。そして、自身は「チームが勝てて良かったです」と言い、控えめにほほ笑んだ。

エース左腕が完全復活。3年連続センバツ出場を目指す静岡に、勢いが出てきた。【河合萌彦】