県内屈指の進学校が21世紀枠の候補に選ばれた。関東は宇都宮(栃木)。今年創部140周年の伝統校で、卒業生には野球殿堂入りした青井鉞男氏(学生野球指導者)、君島一郎氏(野球研究者)がいる。藤田壮大(たけひろ)主将(2年)は「自分たちの実力よりも、OBの皆さんの努力、お力添えのおかげだと思います」と謙虚に話した。

作新学院を筆頭に強豪私学がひしめく栃木で、今秋は8強まで進んだ。チームワークが強みだ。部員は1、2年生あわせて19人だけ。篠崎淳監督(55)は「県大会だと欠員が出ます」と、ベンチ入り上限の20人に満たない現状を苦笑いで話した。ただ、藤田主将は「部員が少ないのはデメリットとは思いません。全員を見渡せるし、話し合いをしても、すぐまとまれる」と胸を張った。

グラウンドの照明は小さなものが4機のみ。この時期は午後5時を過ぎると真っ暗。フライ処理は難しく、ゴロ捕が行える程度の明るさしかない。練習環境は限られるが、全員、率先して練習メニューを消化する。篠崎監督は「大枠は言いますが、後は自分たちで考えて動いています」。平日2時間半ほどの全体練習を、てきぱきこなしている。

同校の特筆事項は、やはり文武両道だ。野球部からも毎年のように東大合格者を出しており、昨年の主将は京大に現役合格した。3番右翼の中山太陽外野手(2年)は東大・文2を志望。文系で学年5位に入る成績で、「神宮で野球をやりたい」と東大野球部を志す。7時過ぎに全体練習を終え、個人練習も行い、それから校内にある自習施設で1時間ほど勉強して帰るのが日課。それで終わらない。宇都宮市内の自宅で食事、風呂を終え、夜11時からさらに1時間半、机に向かう。今秋県大会では清原球場で1発を放ったスラッガーは「高いレベルで勉強したいし、野球も続けたい」と意欲満々だ。

部のもう1つの伝統が、ボランティア活動。東日本大震災から1年後。ボランティアの数が減っていることを聞いた部員たちは、宮城・亘理へ向かった。以来、何か起きれば活動を続けている。台風19号の際は、全員が希望して、被害を受けた市内の家屋の片付けを手伝った。篠崎監督は言う。「野球は人間がやるもの。人として成長することが、野球にもつながると思います」。

21世紀枠の発表は来年1月24日。宇都宮が選ばれれば、宇都宮中時代の1924年(大13)夏以来の甲子園だ。【古川真弥】