<高校野球北北海道大会:白樺学園5-0遠軽>◇23日◇決勝

 5年ぶりの歓喜だ!

 白樺学園が初出場を狙った遠軽を破り、夏2度目の甲子園出場を決めた。1回表に打者9人の猛攻で4点を先取すると、先発した右腕エース小林航(3年)が強力打線を8安打完封。がっちりと投打がかみ合った。06年決勝と同一カードだったが、リベンジを許さず、北北海道116校の頂点に立った。前回初戦敗退で涙をのんだ夢舞台で、今度こそ初勝利を目指す。

 最後の最後に、感情が爆発した。試合終了と同時に、白樺学園ナインが、マウンドへ駆け寄る。跳びはねるように、笑顔で肩を寄せ合った。ベンチ前では、戸出直樹監督(35)もガッツポーズだ。「選手がよくやってくれた。勝てない時期もあったけど、周囲の方に支えてもらえたのが、大きかった」。待ち望んだ甲子園に、再びたどり着いた。

 速攻で決めた。初回から自慢の打線が火を吹いた。1死二、三塁から、4番岡田の中前適時打を皮切りに4点を先取。北大会4試合中、3試合目となる1回の先制攻撃で主導権を握った。序盤で出はなをくじき、逃げ切る白樺スタイルが大一番に凝縮された。援護を受けたエース小林は、強打の遠軽打線を94球で完封。準決勝からの連投を感じさせない安定感があった。

 4月から一新したユニホームには、特別な思いが込められていた。前理事長の長原清起さん(享年77)が、昨年11月に他界。51年夏の道大会で帯広柏葉の選手として決勝まで進出したが、あと1歩で甲子園を逃した高校球児だった。十勝地区1回戦から球場に足を運ぶなど、いつも野球部には目をかけていた。

 戸出監督にとっては、忘れられない言葉がある。05年春の全道大会。前年夏に全国制覇した駒大苫小牧を1回戦で破りながら、続く試合で敗れた。「何やってるんだ。駒苫に失礼だろ」。そんな前理事長の叱咤(しった)激励も、翌年夏に甲子園初出場を果たすと次第に少なくなった。ここ2年、夏は地区予選で敗退。再び甲子園に連れて行くことはできなかった。せめてもの思いと、新しいユニホームに前理事長が大好きだった阪神タイガースの縦じまを入れた。天国の恩師とともに戦う決意を込めた。

 新たな気持ちで迎えた春、船出は決して順風満帆ではなかった。集中力の欠けるプレーが続き、チームの士気は下がった。立ち直るきっかけをくれたのは、東日本大震災で被災した大槌(岩手)だった。5月に駒大苫小牧と3校で行われた交流試合。序盤から大量リードも、大槌ナインは必死に食らい付き、終盤は追い上げられた。多田主将は言う。「僕らは小学4年の時に十勝沖地震を経験している。彼らのあきらめない姿勢を見て、自分たちもしっかりしなきゃと思った」。野球を出来る喜びをかみしめ、原点に立ち返った。

 前回出場した06年は、開幕試合で高知商(高知)に打撃戦で敗れた。戸出監督は、周りの関係者から守備の重要性を説かれた。打撃中心のチームづくりに悩んだ時期もあったが、信念は曲げなかった。「うちは守って逃げ切る野球はしていない。打ち負けないように」。5年ぶりに参上する聖地・甲子園で、打ち勝つ野球を目指す。【木下大輔】

 ◆白樺学園

 1958年(昭33)創立の私立校。生徒数は400人(女子123人)。野球部は創立と同時の創部。甲子園出場は春はなし。夏2度目。部員数46人。OBにスピードスケート清水宏保ら。所在地は河西郡芽室町北伏古東7線10の1。三浦邦朗校長。

 ◆Vへの足跡◆2回戦11-8帯広大谷代表決定戦2-1帯広農1回戦9-5旭川南準々決勝6-0旭川西準決勝4-3女満別決勝5-0遠軽