6月のドラフトで指名された選手が契約を済ませ、まもなくプロとして1歩を踏み出す。エンゼルスから4巡目(全体121番目)で指名されたエリク・リベラ(18)は「第2の大谷翔平になる」と希望に胸を膨らませているという。

リベラは故郷プエルトリコのベースボールアカデミー卒、左投げ左打ちの投手兼外野手という二刀流選手だ。ドラフト前には米国にあるフロリダインターナショナル短大への進学が決まっていたのだが、それでももしドラフトで3巡目までに指名されれば進学をやめてプロ入りしたいと希望していた。

結局、エンゼルスからの指名は希望よりも低い4巡目。だが二刀流で活躍する大谷がいる球団に魅力を感じ、プロ入りを決めた。二刀流としての実力は、18歳にしてすでに最速97マイル(約156キロ)の速球を投げ、打者としてはバレルゾーンで安定して打球を捉え、右方向への長打力には大いに将来性を感じさせると評されている。

プエルトリコの地元メディア「エル・ヌエボ・ディア」でその心境と意気込みを語っており「二刀流を続けるには、大きな困難がある。簡単なことではないと思っている。でも僕は、プエルトリコ出身選手の中で二刀流を成功させられることができる選手がいるとしたら、それは自分だと思っている」と意欲的。「難しいことだけど、自分なら可能だと思う。僕の夢は大谷のようになること。必死に努力を重ね、メジャーまで上り詰めたい」と高い志を掲げている。

大谷が昨年、ベーブ・ルース以来の本格的二刀流としてメジャーで鮮烈デビューし新人王を獲得するまでの活躍をしたことは、こうしてメジャーを目指す外国の10代球児にまで影響を与えたのだ。考えてみれば、北中南米でもプロ入り前の10代や二十歳前後の大学生は、投打両方で活躍する選手は少なくない。米大学野球には、投打に優れている選手に贈られる「ジョン・オルルド・ツーウエイプレーヤー・オブ・ザ・イヤー」という賞も存在するくらいだ。

しかしプロ入り時点で、多くの選手はどちらか一方を選択する。近年、メジャーに二刀流で活躍する選手がいなかったため、球団には育成ノウハウがほとんどなく、選手も前例がないだけにすべてが手探りになってしまう。ところが大谷という確かな成功例が出てきたことで、選手が現実的な目標として捉えられるようになった。リベラの場合はもし二刀流でメジャーまで到達できればプエルトリコ初となるため、それが大きなモチベーションにもつながっているようだ。

大谷に続きたいという選手はこれからも出てくるだろう。幼い頃から二刀流を目指す野球少年も、現れるかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)