新型コロナウイルス感染拡大によるMLBの開幕延期で、野球のない日々が延々と続くことが確実になった。開幕は早くとも5月中旬とされているため、それよりも遅くなる可能性が高い。

野球でも何でもスポーツにはオフシーズンというものがあるが、この状況はオフシーズンとはまったく違う。MLBの場合、オフになるとFAやトレードの移籍が活発に起こり、さまざまな各賞受賞者の発表があり、12月にはウインターミーティングがあり、年が明けるとファンフェスで選手や監督が公の場に登場と、毎週のように何らかの話題が上がってくる。休みがあるようで年中休みがないのが野球というものだ。それがこの突然のキャンセル期間中には、何もない。状況が状況だけに仕方がないとはいえ、先がまったく読めないため記者にとっては、この先何を伝えられるかという見通しも立たない。

スポーツ専門テレビはもちろんスポーツラジオ、ネットなどスポーツメディアが日本の比ではないほど数多く存在する米国のメディア界も深刻な状況に陥った。米疾病対策センター(CDC)の勧告により、50人以上が集まるすべてのスポーツイベントが8週間開催自粛となったことで、試合のライブ中継を主とするテレビ局は、放送枠が向こう2カ月ほぼ空いてしまった。しかも春は本来、プロ、アマ含めて人気スポーツが盛りだくさんだったため、午後から夜にかけてのほとんどの放送枠に試合のライブ中継を予定していた放送局もある。

それらのテレビ局は現在対応に追われているが、FOXテレビ系列のスポーツ専門ケーブルテレビ局「FS1」は、当面は番組制作自体を一切停止し、過去の名試合とドキュメンタリーの再放送をローテで流すのみだという。ESPNはメインのチャンネルで「スポーツセンター」という1時間枠の名物スポーツニュース番組を放送しているが、あらゆるスポーツの中止、中断が決まってからはライブの試合中継が行えない分、このニュース番組を一日中繰り返し再放送しているとか。しかもスポーツ界にほぼ動きがないため、1時間の放送枠が新型コロナウイルス関連のニュースばかりだ。

活字メディアの記者は、全米野球記者協会で情報交換を活発化させている。記者にとっては、試合がなくても各球団が監督やGMが電話会見を開いてくれれば記事が書けるため、今後はそうした取材要請も球団にしていくことになるだろう。しかしどうなるか、今はすべて未知数だ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)