パドレスのダルビッシュ有投手(34)の女房役といえば、昨年12月にカブスから一緒に移籍したビクトル・カラティニ捕手(27)だが、先日のノーヒットノーラン達成を見て、なるほどダルビッシュがほれ込むだけあると感心した。

4月9日のレンジャーズ戦で先発右腕ジョー・マスグローブ(28)が球団史上初のノーヒッターをやってのけた時のことだ。カラティニはダルビッシュの専属捕手として知られているが、今季はダルビッシュと同様に球種が多く右投げのマスグローブとも組んでいる。

試合後のマスグローブは、真っ先にカラティニへの感謝の言葉を口にしていた。「彼は試合中、いろんなことを計算してくれた。例えば上位打線に回るまであと何人だとか。6回は6番から8番だから、7回は9番から2番まで回ると言って、どの打者に対して強気で攻めるか、球数をセーブするのに1球で勝負をかけるとしたら速球、シンカー、カットボールのどれを使うか。すべて考え、計算しててリードしてくれた」と話していた。

なるほど、そこまできめ細かく戦略を練り、9回まで投げ切れるよう球数をコントロールし、ノーヒッターを達成させるための工夫をこらしていたのだ。

メジャーでここまで献身的な捕手は、それほど多くないのではないだろうか。メジャーの捕手は打撃力が求められるポジションなので、捕球やリード面は二の次になりがち。カラティニのように、投手を支えるという役割に徹する捕手は、投手にとっては貴重だ。マスグローブも「達成して真っ先に抱きついてきたのがカラティニだった。うれしかったよ。彼も僕と同じくらい、何としても達成したいと思っていたのだと感じた」と語っていた。

カラティニはカブスに所属していた昨年9月13日のブルワーズ戦でも右腕アレク・ミルズ(29)のノーヒットノーラン達成時にマスクをかぶっており、メジャーのノーヒットノーランを2試合連続で別々のチームで達成した史上初の捕手になった。投手に対するこの献身的な仕事ぶりを見ると、2試合連続のノーヒッター達成は決して偶然ではなく、カラティニだからできたことだと思えてくる。

今季カラティニのオンライン会見を何度か見たが、受ける質問の内容がほとんどすべてダルビッシュに関することでも1つ1つ丁寧に答えているところも好感が持てた。11種類の球種を持つダルビッシュとバッテリーを組むコツは、どんな球がきてもしっかり捕球するためにサインを11種類決めていること、サインがどうしても合わないときはダルビッシュに好きな球を投げさせることだと話していた。そんな話からも、カラティニの良き女房ぶりが垣間見えた。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)