「Strike Out Slavery」のイベントを主催するプホルスの夫人ディードレさん(撮影・斎藤庸裕)
「Strike Out Slavery」のイベントを主催するプホルスの夫人ディードレさん(撮影・斎藤庸裕)

エンゼルスのアルバート・プホルス内野手(39)とディードレ夫人が17年から継続的に行っている「人身売買撲滅キャンペーン」が14日(日本時間15日)、本拠地エンゼルスタジアムで行われた。

「Strike Out Slavery(SOS)」と称され、世界中で起きている人身売買の問題に向き合うために行われたイベントは、今年で3回目。メッツの本拠地シティ・フィールド、ロイヤルズの本拠地カウフマンスタジアムを含め、3球場で開催された。プホルスは公式コメントとして、「エンゼルスファンが支持してくれて、また、より多くの選手やチームがサポートしてくれれば、世界中で起きている現代の奴隷問題について認識を広げることができる」と意義を説明した。

実際に、世界196カ国のうち日本を含めた167カ国で人身売買の事例が報告され、約4000万人が犠牲になっている。「THE GLOBAL SLAVERY INDEX」のリポートによれば、2016年、日本では50件の事例があり、日本政府は、外国人を不法に労働させたとして425人を逮捕した。

この日、イベントを主催したディードレ夫人は語った。

「人身売買はさまざまな場所でいろいろな形で起きている。人身売買の撲滅と、それに対する意識を高めるには、まず知ってもらうこと。目標は(メジャーリーグ)30球団全てでやりたいし、違う国でもやっていきたい」

安全と思われている地域でも、犯罪は起きている。イベント関係者の1人で、これまで被害者の救済とその後の生活のケアを行ってきたリタ・メルカドさんが、1件の具体例を教えてくれた。2002年、場所はカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のアーバイン。

「すごくきれいで安全な住宅街。12歳の少女がいて、どうやら学校に行っていなかった。それが5カ月、6カ月くらい続いていた。彼女は家から定期的にゴミを捨てに出てくるだけ。家の中では子供や家族の世話をさせられていた。隣人が気付くまで、住宅街の人々は誰もそんなことが起きていると知らなかった」

少女は外国から米国に連れてこられて、家の車庫で生活し、家事労働や家主の子供の世話を強いられていた。その後、少女は救出され、養子として育ち、現在では母親になって幸せな生活を送っているという。

メルカドさんは声のトーンを上げて言った。「もし何かそういうことを見たら、電話でもなんでも声を上げて。こういうことはどこでも起こっているから」。

エンゼルスタジアムで行われた今回のイベントでは、レイズ戦の試合後に、99年のグラミー賞に輝いた歌手のローリン・ヒルによるコンサートが行われた。ステージ上には試合を終えたプホルスも登場。人身売買の問題意識をファンとともに共有した。

今年、メジャーリーグ機構からも5500万円の支援金を寄付された。徐々に協力態勢は整ってきている。メジャー通算打率3割、655本塁打、2067打点で将来の野球殿堂入りを確実視されるプホルス。夫人のサポートという形だが、野球のプレーをしながら社会貢献活動を行う。世界中にまん延する問題を風化させない-。揺るがない熱意を感じた。