ドジャース大谷翔平投手(31)が、年を重ねるごとに二刀流の価値を高めている。18年にメジャー挑戦し、エンゼルス時代から投打でプレーできる能力を証明。門戸を開いた一方で、二刀流増殖にはつながらず、むしろ逆転現象で希少価値が高まっている。強豪テネシー大で二刀流選手を育成した経験があるジャイアンツのトニー・ビテロ監督(47)は、いかに体調管理が難しいかを指摘。なぜ、トレンドにならないのか。敵将として大谷と対戦する中で、持論を語った。(取材・構成=斎藤庸裕)
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ビテロ監督は4月22日のドジャース戦、投打で同時出場するリアル二刀流を目の当たりにした。翌日の囲み取材で、自軍選手の話題には冷静な話しぶりだった一方、大谷に関しては表情を緩めた。「ただただ素晴らしい。投打であれだけのことができる、あの負荷に耐えられるのは本当にすごい。昨日の彼は、おそらくほぼベストに近い出来だったんじゃないかな」。試合には勝ったが、大谷から得点は奪えなかった。二刀流の偉大さを身に染みて感じたのか、むしろうれしそうだった。
そう感じるのは、二刀流選手を起用した経験があるからこそでもある。強豪テネシー大で8年間、監督を務めた。その間、投打で起用していたのが、現在ジャイアンツに所属するドルー・ギルバート外野手(25)だった。「彼は左投手として、スタンフォード大に勝った。それが最後の登板だったはず。その後、打撃がすごく良くなって、彼はこう言ってきたんだ。『メジャーリーグでは外野手としてプレーしたい。もし必要なら投げるけど』とね」。
大谷がメジャー挑戦して以降、複数の選手が二刀流として注目された。トレンドになるかと思われたが、その流れは来なかった。同監督は「多くの選手はどちらか一方で成功し始めると、もう片方をやめてしまう。チーム側が『我々は君にこの役割を期待して契約している。まずはこれで一流にならないといけない』と告げ、(投打でプレーする)機会を奪うこともある」と指摘。その上で、「二刀流を続けるには、本当に多くの壁を乗り越えなきゃいけない。実際にやるとなると、体がそれに耐えられなければならない。すごく負担が大きい」と語った。
加えて、スポーツ教育の変化も影響している可能性があるという。アマチュア界で指導経験が長い同監督「今、多くの子どもたちが複数のスポーツをやらなくなっている。一つに特化するんだ。それもこの問題に少し関係していると思う」と証言。米国では幼少期に複数の競技をプレーするのがまだ主流ではあるが、大谷が二刀流旋風を起こしたのにもかかわらず、逆転現象が起こっているようだ。
だからこそより一層、希少価値が高くなっている。「オオタニは、おそらく全て自分なりのルーティンを持っている。でも、それが大きな要素だと思う。本当に特別なアスリートだ」。二つプレーすることを試みるだけでも、困難な壁が立ちはだかる。それを継続して乗り越えている大谷の二刀流は、極めて意義深い。
◆トニー・ビテロ 1978年10月9日生まれ、米ミズーリ州出身。ミズーリ大では内野手としてプレーし、同大のアシスタントコーチに就任。テキサス・クリスチャン大、アーカンソー大でもコーチを経験。18年から25年までテネシー大の監督として、カレッジ・ワールドシリーズに3度出場し、24年に全米制覇を達成。史上初めてプロ経験なしでMLBの監督に就任した。



