オンライン会議システムZoomで講義を行うクロマティ氏
オンライン会議システムZoomで講義を行うクロマティ氏

選手の生の表情や反応から、その時の気持ちを理解できることがある。新型コロナウイルスの感染予防により、メジャーリーグの取材現場ではメディアと選手やチームスタッフの接触は原則禁止となった。Zoomの画面上で質疑応答が行われ、以前に比べて取材のしにくさは否めない。だが、コロナ禍で人との接触が難しくなった一方で、人とつながる可能性が広がったと考えられることもある。

6月14日、プロ野球の巨人で活躍したウォーレン・クロマティ氏(66)が、Zoom上で東京都の野球少年や少女に向けて講義を開催。「Symphony presents クロマティ氏による日本の野球少年・少女に向けたオンラインセッション」(主催:POD Corporation)と題され、保護者を含め約200人が参加した。

アスリートやアーティスト、アントレプレナー(起業家)の活動を支援するPOD社と、個人や組織の生産性を高めるテクノロジー企業のSymphony社が協同で同イベントを企画。自粛生活が続いていた小学生を元気づける目的として開催された。現役通算779試合で打率3割2分1厘、171本塁打、558打点のレジェンド助っ人を前に、子どもたちは積極的に質問を浴びせた。一方のクロマティ氏は画面上で約1時間、バットを持って身ぶり手ぶりで熱血指導。オンライン上の野球教室は、グラウンド上で行われているかのように、にぎやかだった。

本来なら200人が参加する規模の野球教室を開催するには、まず場所の確保が必要だろう。場所によっては遠方のため、参加できない子供たちもいるかもしれない。だが、オンラインにはその制約がない。もちろん直接指導の方が効果的ではあるが、オンラインだからこそ、大勢の野球少年や少女に向けてメッセージを送ることもできる。

講義の最後にクロマティ氏は言っていた。「野球を学ぶ姿勢がすごく大事。君たちが、将来の大谷選手(エンゼルス大谷翔平)、イチロー選手、松井選手(松井秀喜)になる。みんなプロになれるチャンスがある。しっかり野球を学ぶという姿勢を持って頑張ってください」。

記者個人的には直接、人と会って、面と向かって接することを大事にしてきた。一方で、コロナ禍によって一層、多くの人とつながることも可能になった。クロマティ氏の野球教室を取材し、改めて実感した。【MLB担当 斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)

笑顔でポーズを決めるクロマティ氏(2020年2月29日撮影)
笑顔でポーズを決めるクロマティ氏(2020年2月29日撮影)