今オフ、FA(フリーエージェント)市場で最高ランクに挙げられていたトレバー・バウアー投手(30=レッズFA)の争奪戦は、ドジャース移籍で決着しました。

3年総額約107億1000万円、単年では史上最高額(2021年の年俸4000万ドル=約42億円、22年の約47億円)となる超大型契約となりましたが、この難交渉をまとめたのが、最年少の女性代理人、レイチェル・ルーバ氏(28)が担当していることは、意外に知られていないことなのかもしれません。女性の社会進出が著しい米国社会といえども、こと野球の代理人業務に関しては、まだ女性担当は珍しいと言っていいでしょう。

ルーバ氏は、名門UCLA(カリフォルニア大ロサンゼルス校)時代、体操選手として活躍した一方、学業も超優秀だったこともあり、「飛び級」で卒業。ペパーダイン大で法学の修士号を取得し、大手代理人事務所でインターンを務めた後、MLB選手会の弁護士として主に年俸調停に携わりました。その後、自ら代理人事務所「ルーバ・スポーツ」を設立。同じUCLA卒のバウアーを最初のクライアントとして迎え、19年オフには、レッズとの間で1年1750万ドル(約18億3750万円)の契約を結びました。現在は、ヤシエル・プイグ(30=インディアンスFA)の代理人も務めています。

米国の代理人といえば、大物スコット・ボラス氏をはじめ、舌鋒(ぜっぽう)鋭く、強硬な姿勢を貫く「タフ・ネゴシエーター」のイメージかもしれませんが、ルーバ氏はひと味違う手法で交渉を進めているようです。FA市場解禁後は、SNSを通してこまめにファンとも意見交換を行うバウアー同様、ルーバ氏も頻繁にツイッターなどを更新。もちろん、交渉内容は明かしませんが、ファンやメディアとの間で軽妙な受け答えを繰り返すなど、まさに新時代の代理人と言っていいのかもしれません。

ビジネス界に比べて、これまで男性社会といわれてきた野球界でも、近年は女性の活躍が目立ち始めました。マーリンズでは今オフ、キム・アング氏が女性初のGMに就任。ジャイアンツでは昨季からアリッサ・ナッカネン氏がメジャーのコーチ補佐を務めるほか、スポーツ専門局「ESPN」では、ジェシカ・メンドーサ氏が解説者として生中継に定期的に出演するなど、性別を問わず、優秀な人材はチャンスを得ています。

日本では、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などの発言をしたことが問題視され、SNS上などで炎上しています。

もし、メジャー球団のオーナーやGMが、交渉がもつれた一因として、「女性だから…」など同様の発言をしたとすれば…。

間違いなく、謝罪や発言撤回だけでは、収まりが付くはずはありません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)