MLB機構の規定により、21日から全投手に対する粘着物質のチェックが実施されるようになりました。23日に先発したエンゼルス大谷翔平投手(26)が、笑顔を浮かべながら審判団にグラブと帽子を渡す光景がファンの間で話題を集めていましたが、形式上は少なくとも疑われているわけですから、選手によっては複雑な心境になっても不思議ではありません。イニング間に2回の検査を受けたパドレスのダルビッシュ有投手(34)は試合後、「初めてのことだったので、何もないことはもちろん分かってましたけど、緊張しました」と、苦笑しながら振り返っていました。

現時点で違反者は出ていませんが、その一方で、ちょっとした議論も起こり始めています。

22日に行われた「フィリーズ-ナショナルズ戦」でのことです。ナショナルズの先発は、サイ・ヤング賞3回の剛腕マックス・シャーザー投手(36)。故障から復帰した同投手は、他の投手と同じように1回、3回の終了後、2度のチェックを受けました。ところが4回途中、フィリーズのジョー・ジラルディ監督(56)が、髪の毛のチェックを再度要求。審判団が認めたため、再検査を受けるハメになりました。イニングの途中にプレーを止められたシャーザーにすれば、気分がいいはずもありません。帽子とグラブを放り投げ、ベルトを緩め始めるほど、明らかに不機嫌そうでした。

結果は、異常なしで試合は続行されました。もっとも、シャーザーが交代時にフィリーズベンチに向かって言葉を発したことで、激高したジラルディ監督が飛び出してきて挑発。退場処分を受けました。試合後、シャーザーは「望むのであればいくらでもチェックすればいい。見たいのであれば、すべての服を脱いでもいい。オレは何もない」と怒り心頭でした。一方のジラルディ監督は、自らの行動に後悔はないとしたうえで、「私はチームにとって正しいことはしなくてはいけない」とコメントしています。

確かに、相手チームには検査を要求する権利が認められています。だからといって、必要以上に検査を繰り返すと、試合進行の妨げにもなりかねません。

今回の一件について、ドジャースのエース左腕クレイトン・カーショー(33)は、「もし検査を要求して異常なしであれば、チャレンジの回数を減らすようにするのはどうか」と私見を述べています。

本当に疑わしければ検査を要求するのも正当ですが、もし相手投手のペースを乱す目的だとすれば…。

スタートしたばかりの粘着物質取り締まりに関する議論は、今後もまだまだ続きそうです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)