MLBの労使協定が失効する米東部時間12月1日午後11時59分まで、残り1週間を切りました。これまでオーナー陣と選手会は、新協定について折衝を続けてきましたが、現時点では合意に至っていません。今回は、ぜいたく税の対象となる総年俸2億1000万ドル(約231億円)の上限を1億8000万ドル(約198億円)を引き下げようとするオーナー側に対し、選手会側が抵抗。このほか、年俸調停の廃止、FA(フリーエージェント)取得期間の変更、ユニバーサルDH(両リーグでDH採用)などが争点として挙げられています。

ロブ・マンフレッド・コミッショナーは、「12月1日までに合意するための努力を続けていく」と話した一方で、オーナー側が球団機能を停止させるロックアウトに踏み切る可能性を口にしたこともあり、期限までに妥結しない可能性が高いものと見られています。

もし、ロックアウトになると、メジャー40人枠内のFAやトレード交渉が完全に凍結されるだけでなく、球団の施設も利用できなくなるため、故障中の選手がリハビリに通うことができなくなることなどが懸念されています。また、球界関係者が一堂に会するウインターミーティング(12月6日~)も、マイナー関係者らだけで行われるとみられています。

だからといって「世界最強の労働組合」と言われるMLBの選手会が、簡単に妥協するとも思えません。1965年の設立以来、何度となくストライキに踏み切りながら、年金制度の確立、FA権の導入など、選手の地位向上を成し遂げてきました。実際、コロナ禍で春季キャンプが中断した昨季も、公式戦の再開を巡って、オーナー側と真っ向から対立。試合数と年俸の分配に関して強硬な姿勢を貫き続け、交渉が泥沼化した経緯もあります。

米球界内には、来季の春季キャンプや公式戦開幕に影響が出ない限り、交渉の長期化はやむを得ないと見る向きもあります。

ポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指す広島鈴木誠也外野手や、マリナーズからFAとなった菊池雄星投手の動向にも影響を及ぼすだけに、労使闘争の行方は気になるところです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)