エンゼルス大谷翔平は日本へ帰国しましたが、キャンプ地アリゾナでは、通常通りに春季キャンプが続いています。

98年のマック鈴木から21年の菊池雄星(現ブルージェイズ)まで、24年連続で日本人メジャーリーガーが所属したマリナーズには、過去2年間、日本人選手は不在ですが、会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(49)は、今年もユニホーム姿で精力的に動き回っています。

全体練習前には、ストレッチ、ウオーミングアップ、キャッチボール、遠投と、ルーティンは現役時代とほぼ変わっていません。選手らが姿を見せると、一緒にランニング、キャッチボールと同じメニューで体を動かします。昨年は、オフの女子野球チームとの対決で右肩を痛めたこともあり、メニューをセーブしましたが、今年は万全。「天国ですよ。去年に比べたら。遠投もやってますしね」。現時点で、フリー打撃には「登板」していませんが、肩はスタンバイOK。ティー打撃スタイルでの外野ノックでは、現役時代と同じ黒バットで広角に飛球を打ち分けています。

練習の合間には、「愛弟子」と呼ばれるフリオ・ロドリゲス外野手(22)にアドバイスを送る光景も見られます。「よく来ますよ、フリオは」。昨季のア・リーグ新人王で、シーズン途中に最長18年、最大4億7000万ドル(約635億円)で契約延長したスラッガーは、尊敬する「師匠」に事あるたびに質問をぶつけて来るそうです。「技術というよりも、考え方ですかね。やる気がある」。

マーリンズ時代には、ディー・ストレンジ・ゴードン内野手(ナショナルズFA)、クリスチャン・イエリチ外野手(現ブルワーズ)ら若手選手に慕われ、彼らは「イチロー・チルドレン」とも呼ばれていましたが、ロドリゲスはまさにその1人。マリナーズの今後を背負う大黒柱としては、2年目がさらに重要になります。そんな愛弟子に対し、イチロー氏は「(大事なのは)今年からも、です」と高いハードルを期待する一方で、「考え方がすばらしい」と、スーパースターとしての素養も見抜いています。

オフに帰国すれば、全国各地の高校で指導したり、女子野球との試合を開催するなど、どんなレベルでも真摯(しんし)な姿勢で指導を続けるイチロー氏。球界の「至宝」は、今年もハツラツとした姿をグラウンドで披露しています。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

現役時代と変わらず、しなやかなキャッチボールを続けるイチロー氏
現役時代と変わらず、しなやかなキャッチボールを続けるイチロー氏
ティー打撃のスタイルでの外野ノックでも、イチロー氏はいつものポーズでスタート
ティー打撃のスタイルでの外野ノックでも、イチロー氏はいつものポーズでスタート