全5チームが勝率5割以上とハイレベルな戦いが続くア・リーグ東地区で、開幕前は伏兵と見られていたオリオールズが6日、リーグ最速70勝に到達しました。3~4月を19勝9敗と好スタートを切りながら、宿敵レイズがそれ以上の快進撃を続けたため、最大6・5ゲーム差まで開いた時期もありました。

その後、レイズがもたつく間、着々と白星を重ね、7月5日からは8連勝。同19日に首位に並ぶと、徐々に差を広げ、3ゲーム差(6日現在)を付けて首位を快走しています。アスレチックスからトレードで移籍した藤浪晋太郎投手(29)も、試合終盤の緊迫した場面で好投するなど、チーム全体が勢いに乗っています。

メッツ戦で力投する藤浪晋太郎(AP)
メッツ戦で力投する藤浪晋太郎(AP)

もっとも、名門球団の歴史の中でも、過去数年は最悪の時期でした。17年から21年までの5年間は最下位4回(4位1回)。18年には球団ワーストの年間115敗(47勝)を喫するなど、屈辱的なシーズンもありました。それでも、ハイド監督が就任した19年以降は、積極的な世代交代を進め、昨季は83勝79敗と6年ぶりに勝率5割を上回るなど、上位を狙えるだけの戦力が整ってきました。

だからといって、高額資金を積んで他球団の大物選手を大型補強したわけではありません。19年ドラフト全体1位のアドリー・ラッチマン捕手(25)をはじめ、15年1巡目のライアン・マウントキャッスル一塁手(26)、19年2巡目のガナー・ヘンダーソン内野手(22)、16年3巡目のオースティン・ヘイズ外野手(28)、15年13巡目のセドリク・ムリンス外野手(28=負傷者リスト入り中)ら主力選手のほとんどが「生え抜き」というのは、育成システムの秀逸さを物語っています。

昨季33本塁打を放つなど、主砲に成長したアンソニー・サンタンダー外野手(28)にしても、16年の「ルール5ドラフト」でインディアンス(現ガーディアンズ)から獲得するなど、スカウティングの優秀さも際立っています。前半戦の数字だけを見れば、判断しづらかったはずの藤浪の潜在能力を高評価したのも、スカウトの鋭い眼力によるものでしょう。

オリオールズのアンソニー・サンタンダー(2022年7月9日)
オリオールズのアンソニー・サンタンダー(2022年7月9日)

ハイド監督は「毎晩、(活躍するのが)同じヤツばかりじゃない。それがいいチーム。勝つためには、細かいことをやらなくてはいけない」と、スーパースター不在でも頂点を目指せる、確かな手応えを感じ取っています。

今季の総年俸は、30球団中28位の約7057万ドル(約98億8000万円)。今季の開幕時で、ともに年俸4333万ドル(約60億6620万円)の契約を持つメッツのマックス・シャーザー投手(現レンジャーズ)、ジャスティン・バーランダー投手(現アストロズ)の2人分にも遠く及びません。それでも、勝てるチームに再建できることを、今季のオリオールズは実証しています。

無論、1983年以来となる世界一への道が険しいことは言うまでもありません。ただ、低迷期を脱したオリオールズに「黄金期」が近づいていることは間違いなさそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)