エンゼルス大谷翔平投手(27)が8月29日、球団史上初の40本塁打&20盗塁を達成しました。さらに大リーグ史上初の「50本塁打&30盗塁」達成なるかにも、話題になっています。

大リーグでは、シーズン30本塁打&30盗塁以上のいわゆる「30-30」が、パワーとスピードを兼ね備えたエリートの勲章になっています。

さらに1980年代以降はパワー、スピードとも進化し、88年にホセ・カンセコ(アスレチックス)が史上初の「40-40」を達成。その後も、96年バリー・ボンズ(ジャイアンツ)、98年アレックス・ロドリゲス(マリナーズ)、2006年アルフォンソ・ソリアーノ(ナショナルズ)と計4人が記録しています。

他にもシーズン50本塁打&20盗塁以上の「50-20」があり、後に殿堂入りした1955年ウィリー・メイズ(ジャイアンツ)をはじめ4人が達成。達成者が同人数なので、同等の価値があると言えます。

大谷は12日(日本時間13日)現在、メジャートップタイの44本塁打、ア・リーグ5位タイの23盗塁。残り19試合で史上5人目の「50-20」どころか、「50-30」も可能性があります。

もし前人未到の「50-30」を達成したら、歴史的な快挙と言えます。なぜなら、昔からどのチームの監督もホームラン打者にはどんなに足が速くても、ケガ防止のためあまり走らせないからです。

12年に大谷の同僚マイク・トラウト外野手(30)は新人で30本塁打&49盗塁をマークして「30-30」を達成。ア・リーグ盗塁王にも輝きました。しかし、17年は「40-40」も期待されましたが、二盗を試みた際に左手親指の靱帯(じんたい)を損傷。自身初の負傷者リスト入りとなり、6週間も戦線離脱しました(最終的には33本塁打&22盗塁)。翌18年には三盗を試みて滑り込んだ際に右手首を捻挫(同39本塁打&24盗塁)。以降、あえてスピードはあっても盗塁を自重するようになり、最近2年間は計3盗塁しか決めていません。

また、大リーグでは近年、全体的に盗塁が減少傾向にあります。15年から高度分析システム「スタットキャスト」の導入により、新たな打撃理論「フライボール革命」の流行が影響しています。ホームランが増加し、盗塁の価値が減少。今季は低反発球の採用によって本塁打数は減っているものの、1967年以降では最も低い1試合平均0・45盗塁だけ。かつては毎年のように「30-30」を達成する万能選手がいましたが、最近はあまり見られなくなりました。

だからこそ、大谷が投手でもホームラン打者でも一流の成績を残しながら、ケガのリスクを恐れず、これだけ積極果敢に盗塁を試みる姿勢には畏敬の念を抱くばかりです。投打二刀流を貫いての「40-20」だけでも仰天なのに、2ケタ勝利を挙げ、未到の領域「50-30」まで到達したなら、まさに「走攻守」で究極の存在として、100年後まで語り継がれます。ベーブ・ルースも脱帽でしょう。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)