空を切っても切らせても、絵になる男-。エンゼルス大谷翔平投手(27)にしかできない、もう1つの勲章です。19日(日本時間20日)のアスレチックス戦で先発マウンドに上がり、8回10Kの力投で今季3度目の1試合2ケタ三振を奪いました。

10勝目はならず103年ぶりの偉業こそお預けとなりましたが、投打二刀流として「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」の他に、注目したい記録があります。投手で150奪三振、打者でも150三振、つまり投打での「ダブル150K」です。

今季は22試合に先発し、123回3分の1を投げて146奪三振。打者ではメジャー3位の44本塁打をマークする一方で、同3位の178三振です。すでに150三振以上を喫して日本選手のシーズン記録を更新中ですが、投手でも登板予定が残り最大2試合あり、150奪三振が達成間近となりました。

元祖二刀流ベーブ・ルースはレッドソックス時代、投手が主だった1916年に170三振を奪いましたが、投打で活躍した18年は40奪三振、19年は30奪三振にとどまりました。打者では両年とも58三振だけです。

ちなみに、ニグロリーグの記録を見ても伝説の二刀流スター、ブレット・ジョー・ローガンが1923年、カンザスシティー・モナークス時代に投手として151奪三振。一方、打者では68試合で打率3割6分2厘、7本塁打、44打点ですが、三振については記録がありません。当時はおそらく、大リーグと同じくニグロリーグも打者の三振が少なかったからだと思われます。

つまり、もし大谷が150奪三振を達成すれば、おそらく史上初めて投打で150三振以上という記録になるでしょう。打者とって三振は不名誉な記録と思われがちですが、決してそんなことはありません。

「ミスターオクトーバー(10月の男)」の異名を持つ殿堂入りスラッガーで、エンゼルスOBでもあるレジー・ジャクソン外野手は通算563本塁打をマーク。一方で、歴代1位の通算2597三振を喫しました。

しかし、彼は三振記録に誇りを持っています。なぜなら、ホームラン打者にとってもう1つの魅力は、絵になるような豪快なスイングにあるからです。千両役者のジャクソンがフルスイングして、上体が180度回転する姿は、まるで名画のように美しいものでした。その力感あふれるスイングこそ、特大ホームランを生むのか、三振に終わるのか、紙一重のスリリングな結末に誰もが感情を揺さぶられる、大リーグの醍醐味(だいごみ)なのです。

投打とも「150K」というのは、大リーグを代表するパワーピッチャーであると同時に、パワーヒッターの証し。こんな投打ともにパワフルな二刀流選手は、大リーグ146年の歴史でも初めてでしょう。野球界でも不朽の名作として、「ショウヘイ・オオタニ」の名は刻まれていきます。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

エンゼルス対アスレチックス 8回裏エンゼルス2死、空振りの三振に倒れるエンゼルス大谷(撮影・菅敏)
エンゼルス対アスレチックス 8回裏エンゼルス2死、空振りの三振に倒れるエンゼルス大谷(撮影・菅敏)