大リーグのレギュラーシーズンはラスト1週間となり、ア・リーグの本塁打王争いが白熱しています。エンゼルス大谷翔平翔平投手(27)のペースが後半戦ダウンし、9月に入って現在46本塁打のゲレロ(ブルージェイズ)とペレス(ロイヤルズ)に抜かれて3位後退。それでも1差の45本塁打で追います。ハイレベルで熾烈(しれつ)な打ち合いになっています。

大リーグ歴代最高の本塁打王争いといえば、1998年マーク・マグワイア(カージナルス)とサミー・ソーサ(カブス)による空前絶後の「ホームランチェイス」が思い出されます。マグワイアが70本、ソーサが66本という、史上初めて2人が60発を超えて決着する空中戦となりました。

一方で、2009、12年のように最後の最後までもつれた大接戦もありました。

2009年はナ・リーグ本塁打王争いで、当時カージナルスの主砲アルバート・プホルスが前半戦を終えて32本塁打。06年の本塁打王ライアン・ハワード(フィリーズ)、翌07年の本塁打王プリンス・フィルダー(ブルワーズ)の各22本を大きく引き離し、独走状態でした。

ところが後半戦に入ると極度のスランプに陥り、8月まで9本しか上積み出来ず。それでも、9月は最初の9試合6発を放って47本塁打と復調したかに見えましたが、残り21試合はノーアーチにより公式戦終了。対して、ハワードは後半戦23本の猛追も届かず45本止まりでした。

一方、元阪神の父セシル・フィルダーと初の親子本塁打王でも話題になった息子プリンスは10月4日の最終戦で、カージナルスとの直接対決。意外にもメジャー9年目で初の本塁打王目前のプホルスが見つめる中、5回に45号、9回に46号と1本差まで迫って、ゲームは延長戦へ。しかし、当時カージナルスのトニー・ラルーサ監督(現ホワイトソックス監督)は延長10回にフィルダーを敬遠四球で歩かせて、プホルスに初の本塁打王を取らせました。

大リーグは常に正々堂々と勝負すると思われがちですが、ときには敬遠策もあるのです。

12年のア・リーグ本塁打王争いでは、3冠王を狙うタイガースのミゲル・カブレラに注目が集まりました。8月終了時点で当時レンジャーズのジョシュ・ハミルトンが36本、ヤンキースのカーティス・グランダーソンが34本、カブレラが33本という三つどもえの戦いでした。

その後、9月24日にハミルトンが43号で単独トップに立ちましたが、残り9試合でノーアーチと足踏み。その間、カブレラが同29日に43号で並び、10月1日に44号を打って単独トップに浮上。一方、グランダーソンは10月3日の最終戦で2回に42号、7回に43号を打って1本差に。ところが、すでにチームは地区優勝を決めており、14対2と大量リードしたため、ジョー・ジラルディ監督は7回にもう1度回って来た打席で代打を起用。プレーオフのため、個人タイトルよりも休養を優先させたのです。

こうしてカブレラが逃げ切り、大リーグで45年ぶりの3冠王が誕生しました。

今季ア・リーグのホームラン王争いでも、独走からの後半戦スランプ、親子選手や3冠王など、当時を連想させるものがあります。果たして、残り1週間でどんなドラマが待っているのでしょうか。大谷が日本選手初のキングに輝くのか、ラスト10月3日(日本時間同4日)の最終戦まで、目が離せません。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)