6年ぶり開催のWBCが8日に台湾でのA組から開幕し、B組の侍ジャパンは9日の中国戦で初戦を迎えます。最大のライバル韓国も同組ですが、戦力比較から、上位2チームが勝ち上がる1次ラウンド突破は堅いでしょう。油断大敵なのは、今大会から方式が変わって一発勝負となった2次ラウンド(準々決勝)。最大の強敵となりそうなのが、オランダです。

過去2大会連続でベスト4に入り、今大会は初のファイナル進出を狙うチームだからです。また、ロッテやヤクルトで活躍したヘンスリー・ミューレン監督(55)が指揮を執り、2013年楽天の日本一に貢献したアンドリュー・ジョーンズ氏(45)がベンチコーチを務めるなど、日本人にもなじみのあるチームです。

本国は野球が盛んではないヨーロッパにありますが、カリブ海に浮かぶオランダ領アンティル諸島出身の選手たちが中心となり、近年は多くの有望選手をメジャーに輩出します。最大の特長は、一流の大リーガーたちで構成される強力な内野陣にあります。

代表の顔は、昨年12月にレッドソックスからFAでパドレスと11年2億8000万ドル(約392億円)の大型契約で話題になった強打のザンダー・ボガーツ遊撃手(30)です。ほかにも、かつてメジャーNO・1遊撃手とも称されたアンドレルトン・シモンズ(33=元カブス)、ジョナサン・スコープ二塁手(31=タイガース)やディディ・グレゴリウス遊撃手(33=元フィリーズ)らそうそうたる顔ぶれです。

また、ボガーツ、シモンズ、スコープの3人は3大会連続出場となり、ボガーツは通算OPS・737、シモンズは通算打率3割3分9厘とチームを支えました。さらに、ヤクルト時代の13年に日本プロ野球記録のシーズン60本塁打の金字塔を打ち立てたウラディミール・バレンティン外野手(38)もいます。前回17年大会ではチームトップの打率6割1分5厘、4本塁打、12打点と活躍しました。

一方で、投手陣は手薄です。計算できる投手もいますが、メジャー通算391セーブの抑えケンリー・ジャンセン(35=レッドソックス)、先発で実績のあるジェア・ジャージェンス(37=元ブレーブス)は決勝ラウンドのみ参戦予定。駒不足は否めません。

それでも、メジャー通算287勝で殿堂入りしたバート・ブライレブン投手コーチは投手陣に、「初球ストライクを取り、有利なカウントにする」ことを提唱。「ストライクゾーンで攻めろ」という徹底指導により、過去大会では実績のない投手が予想以上の好投を見せました。

そういう意味では、今大会もオランダ投手陣がどんなピッチングを見せるか、対戦実現なら日本がいかに初球ストライクを打つかが、勝利のカギを握ると思います。

そして、2次ラウンドで対戦の可能性があるもう1カ国には、キューバを挙げます。「赤い稲妻」はオリンピックなどの国際大会で華々しい成績を残し、かつてはアマチュア最強国に君臨。だが21世紀に入って亡命者が続出し、人材がメジャーへ大量に流失。代表は弱体化の一途をたどりましたが、今大会から初めてメジャー選手の参加が決まり、復活なるか興味深いところです。

MLBからは、伝統的にキューバ出身選手を輩出するホワイトソックから、ヨアン・モンカダ三塁手(27)とルイス・ロバート外野手(25)の2人が参戦します。

メジャー4年目のロバートは若く、20年ア・リーグ新人王投票2位でゴールドグラブ賞を受賞。21年は自己最高の打率3割3分8厘、13本塁打と活躍しました。一方、元レッドソックスの若手有望株だったモンカダは16年オフにエース左腕クリス・セールとのトレードで移籍。19年には自己最高の打率3割1分5厘、25本塁打をマーク。今大会ではロバートと2、3番打者として期待されます。

さらに、13、14年と2年連続ホームランダービーで優勝し、メジャー通算165本塁打のヨエニス・セスペデス外野手(37=元メッツ)も代表入り。メジャー組の合流により、チーム力は確実にアップします。さらに、日本プロ野球(NPB)所属のマルティネス、ロドリゲス(ともに中日)、モイネロ(ソフトバンク)、昨季までNPBでプレーしたグラシアル、WBC通算7本塁打のデスパイネ(ともに元ソフトバンク)らの活躍次第では、日本を脅かす存在になるかも知れません(大リーグ研究家・福島良一)(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

23年2月22日、巨人対キューバ代表 試合前、巨人の練習を見つめるキューバ代表グラシアル(左)
23年2月22日、巨人対キューバ代表 試合前、巨人の練習を見つめるキューバ代表グラシアル(左)
23年2月23日、ソフトバンク対キューバ 練習試合を終え記念撮影する両チーム。前列藤本博史監督、デスパイネ、グラシアル
23年2月23日、ソフトバンク対キューバ 練習試合を終え記念撮影する両チーム。前列藤本博史監督、デスパイネ、グラシアル