ドジャース大谷翔平投手が、オープン戦で2番打者として先発しています。3月20日に行われる、メジャー史上初の韓国開幕戦(パドレス戦)が近づく中、これには正直、驚いています。
なぜなら、昨年ドジャースはムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンともにMVP級の活躍を見せて、球史に残る最強の1、2番コンビを形成。たとえ、昨年ア・リーグMVPに輝いた大谷が加入しても、1番ベッツ、2番フリーマンの打順を崩さないと思っていたからです。
実際、2月3日のファン感謝デーでデーブ・ロバーツ監督も「3番大谷」の構想を明らかにしていました。ところが、オープン戦を前にフリーマンが「ドク(ロバーツ監督)と時間をかけて話し合った」とコメント。「ドクの考えをいろいろ聞いて、僕もそれに同感だ」と話しました。その時に「もしかしたら」と思いました。
いざ、ふたを開けて見ると、2月27日のオープン戦で大谷が2番DHで出場。それ以来、ずっと1番ベッツ、2番大谷、3番フリーマンの打順が続いています。ロバーツ監督は「ショウヘイをフレディの前に打たせることで(相手バッテリーが大谷との勝負を避けることから)守ってくれる」と説明。確かにエンゼルス時代の大谷は勝負を避けられることが非常に多く、ここ3年間メジャー最多の合計55個も敬遠四球で歩かされました。
また、大谷が出塁しても「フレディの前で足の速さを生かすことができる。一塁から盗塁する可能性があるだけでも得点しやすい状況を生み出せると思う」と戦略を明かしました。
2番起用について、ロバーツ監督の説明も含めて、いくつか理由があります。まずは相手投手が大谷を歩かせないためにストライクゾーンで勝負することです。そうなると相手投手は変化球より、むしろ速球主体のピッチングになります。昨年エンゼルスで大谷は速球に対し、驚異の打率3割7分4厘を残しました。
それとフリーマンはホームランより二塁打が多い打者で、昨年メジャー最多と同時に球団新記録の59二塁打をマーク。大谷が一塁にいてフリーマンが二塁打を打てば、俊足を飛ばし一気にホームインできます。また、3月6日のオープン戦で大谷が初盗塁を決めた時、フリーマンは「彼にはいつ盗塁してもいいと言った。彼が盗塁してくれれば、私は得点圏で打席に入れる。彼が100盗塁することを願う」と冗談交じりに言いました。昨年のフリーマンは、得点圏打率3割7分を残したクラッチヒッターでもあるからです。
さらに特筆すべきは、大谷のメジャー6年間の成績を見ると、3番の通算OPS・856に比べて、2番の通算OPS1・013の方が、圧倒的に高い数字を残しています。ロバーツ監督は「これで決めたわけではない。ただし、動かすにしてもすぐにはやらない。1、2週間やってうまくいかなくても変えない」と明言。だから、通常オープン戦は主力選手を交互に休ませながら行われますが、大谷が出場する試合はすべてベッツとフリーマンも先発出場。ロバーツ監督が毎試合MVPトリオの打順を確かめているのは明白であり、今のところ十分に機能していると言えます。
今シーズン大谷が2番に定着すれば打席数も増え、それだけ多くのホームランや盗塁なども見込めます。史上最強MVPトリオの中で「最強の2番打者」に期待したいと思います。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)