あと数年でナ・リーグは指名打者制を採用するだろう。つまり、MLBで投手が打席に立つ姿が見られなくなるだろう。という発言が注目を集めている。それもヤンキースの田中将大投手の怪我を発端として。

 この発言をしたのはスポーツ専門局ESPNのレポーター、バスター・オルニー氏。オルニー氏は出演した番組のなかで、まず「ナショナル・リーグのルールがなくなるのは時間の問題で、両方のリーグが指名打者制を採用する」と発言。そのうえで田中が現地8日に先発したメッツ戦で走塁中に両もも裏を負傷し、緊急降板したうえ10日間の故障者リスト入りしたことを指摘し、「ホームプレート付近での衝突が問題となった4、5年前に役員の間で議論されている。彼らは高額な投手をリスク、本来から外れたプレーに晒したくない。投手の打撃は外れたプレーだ。そのためナショナル・リーグのルールは廃止され、3~5年以内に終了すると思う」と語った。

 指名打者制は1973年にア・リーグが採用したが、ナ・リーグは不採用のままとなっている。これまで何度も指名打者制の採用が議論の的となってきた。ただ指名打者の有無が両リーグ最大の差異であり、魅力と捉える向きも多い。

 実際、オルニー氏も個人的には伝統的なナ・リーグのスタイルのファンではあるとしたうえで、最終的にはこの問題は財務に結びつくと話している。投手が投げられる健康状態を維持することがチームの最優先事項にいきつくのだとした。

 実際、高額な契約が増加する一方で大谷翔平の肘の負傷が象徴するように近年、MLBでは投手の怪我の多さが大きな問題となっている。それだけに攻撃での負傷というリスクをなくしたいとチームが考えるのもある意味もっともだといえる。

 特にア・リーグのチームがホームでナ・リーグのチームが対戦するインターリーグの試合では普段打席に立たないナ・リーグの投手が打席に立つことを強いられている。我々は珍しいシーンに喜ぶ事が多いが、チームとしてはハラハラだろう。

 果たしてオルニー氏の発言通り、あと数年でナ・リーグに残された伝統は失われてしまうことになるのか。いずれにしても様々な状況を考えるとこの議論は高まることになりそうである。