レンジャーズのダルビッシュ有投手(28)が右上腕三頭筋の張りを訴え、オープン戦初登板を予定の2回でなく、1回12球で降板した。本人も球団も大事ではないことを強調し、一夜明けたダルビッシュは「まだましじゃないですか」とコメントした。6日にMRI検査を受け、チームドクターの診断を仰ぐ。昨季終盤は右肘の炎症で戦線を離脱したこともあり、球団は慎重な姿勢を見せる可能性もある。

 2回表が終了した直後、球場に衝撃が走った。登板予定だったダルビッシュが首をひねりながらクラブハウスへ引き揚げた。一塁側の客席で応援していた交際中の山本聖子とその兄山本KID徳郁らの顔にも心配そうな表情が浮かんだ。球団は「右上腕三頭筋に張りを感じたため、念のために降板」とすぐに発表した。

 それから約15分後。右ひじ付近にアイシングを施して会見場に姿を現したダルビッシュは、思いのほか明るい表情だった。「全く心配する必要はないです」と言い切った。本人によると、張りを感じたのは試合直前のブルペン投球。「だんだん張ってきたかなって感じだったんで、そこから力をあまり入れずにやりました」と、登板は回避せずにマウンドに上がった。

 異変はあった。春先とはいえフォーシームの平均時速は89マイル(約143キロ)と遅かった。それでも制球はさえ渡っていた。1安打を許したが最後はモラレスをチェンジアップで空振り三振に仕留め、1回を12球で無失点とした。既に張りを感じていたため制球重視の投球を意識。「投手ってやっぱり球速じゃなくてコントロールが大事なんだってよく分かったピッチングでした」と内容には満足していた。

 ダルビッシュは軽症を強調し、報道陣がけがの質問を続けると「誰か今日の投球についての質問はないのかって。良かったでしょ、今日。That was good, right?」と笑顔でおどける余裕もあった。今後のスケジュールは未定だが、首脳陣の判断次第では次回登板を回避させる可能性もある。しばらくノースローとなれば調整遅れは必至だろう。先発が有力視されている開幕日は1カ月先の4月6日。昨年の故障から回復し、順調な春を送っていただけに出はなをくじかれた形となった。【佐藤直子通信員】

 ◆上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん) 「力こぶ」を作る上腕二頭筋の裏側にある筋肉で、俗に「二の腕」と言われる。二頭筋が肘を曲げるために使うのに対し、三頭筋は肘を伸ばす動作を行う。一般的に上腕部のトレーニングは二頭筋に集中しやすいが、三頭筋の方が太くて筋量も多い。

<ダルビッシュこれまでの主な故障>

 ▼05年(日本ハム) 1月の新人合同自主トレ初日に右膝関節炎でリタイア。

 ▼06年(日本ハム) 6月に右肩違和感のため登録抹消。

 ▼09年(日本ハム) 右手人さし指の痛みを押して11月の日本シリーズ第2戦に強行先発し勝利投手に。後の検査で疲労骨折していたことが判明した。

 ▼13年(レンジャーズ) オールスターに選手間投票4位で選出されたが、直前に右僧帽筋の張りのため故障者リスト入り。2年連続で球宴登板なしに終わった。

 ▼14年(レンジャーズ) 8月に右肘の炎症のため故障者リスト入り。