野球少年よ、アメリカで待っている-。マリナーズのイチロー会長付特別補佐(45)が23日、大会長を務める「第23回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席。小学6年生の選手から、日本で対戦出来るかを聞かれ「日本でやることはないと思います。アメリカに来てやろう」と日本球界復帰の可能性を否定した。子どもたちにエールを送りながら、自身は背番号と同じ51歳まで現役を続けることに意欲を示した。

イチローの中に、日本球界でプレーするビジョンはなかった。出身地である愛知・豊山町で毎年開催される「イチロー杯」の閉会式に出席。恒例となった質問コーナーで、小学6年生の選手から質問を受けた。「ボクは高校を卒業したらプロになります。日本で対戦できますか?」。イチローは穏やかに返した。

「日本でやることはないと思います。アメリカに来てやろう」

日本球界復帰の可能性を否定した。自らの言葉でここまで言及したのは初めてといえる。そして続けた。「最短で18歳、6年後か。僕が51歳…いい数字だ。51歳まで、できたらいいよね」。少年が高校を卒業し、18歳になる。その時、イチローは背番号と同じ51歳。未来の対戦を思い描き、現役続行に意欲を燃やした。

今季は3月に古巣マリナーズと1年間のメジャー契約を結び、開幕スタメンの座をつかんだ。15試合に出場し、9安打、打率2割5厘。5月に入り、球団の会長付特別補佐に就任した。試合には出ず、チームに同行。プレーできない状況でも、シーズン終了まで黙々と練習を続けた。

その日々への覚悟を、イチローはこう紡いだ。

「今年の僕は大きな転機だった。春にマリナーズユニホームを着た。でも5月頭で試合に出られなくなった。それからは、1人でトレーニングして、バットを振って、ボールを投げていた。(そんな生活を)自分で続ける自信はあった。シーズンを終えたときに、自分に負けたくなかった」

来季はマリナーズとアスレチックスが日本で3月に開幕戦を行う。「春へ向けて、自主トレを続ける」と実戦復帰を視野に入れる。イチローは少年少女にこんなエールを送った。

「自分でできると思ったことは、必ずできるとは限らないけど、できないと思ったことはできない。自分の中で可能性を決めないで」

それは自分自身への言葉でもあった。【伊東大介】