近代野球が誕生した1900年以降、投手登録の選手が大リーグでサイクル安打を達成した例はありません。

1920年と21年にサイクル安打を記録したジョージ・シスラー内野手も、投手経験はありますが一塁手登録でした。ただ、ポジション登録の定かでない1800年代には、いくつか例があります。

1894年(明27)9月28日、シンシナティ・レッズのトム・パロット選手は、ニューヨーク・ジャイアンツ戦で快挙を達成しました。パロットはこの年、打者としては68試合で打率3割2分3厘、4本塁打。投手としては41試合に登板、36試合に先発し17勝19敗という記録を残しました。主に投手でしたが、捕手以外のすべてのポジションで出場した記録があります。

82年5月25日、バファロー・バイソンズのカリー・フォーリー外野手はクリーブランド・ブルース戦で大リーグ初のサイクル安打を記録しました。彼はこの年の登板機会は1度だけでしたが二刀流選手でした。83年7月30日にメジャー2番目の達成者となったフィラデルフィア・アスレチックスのロン・ナイト選手兼任監督も同様です。

そして、自分が投げた試合でサイクル安打を達成した選手が1人だけいます。88年7月28日、シカゴ・ホワイトストッキングスのジミー・ライアン外野手は、デトロイト・ウルバリンズ戦に「1番中堅手」で先発出場。2回途中からマウンドに上がりました。サイクル安打を達成しながら7回1/3を投げて10失点。21-17の乱戦を制しました。

いずれも日本では明治時代の出来事。投手以外の守備経験のない大谷選手の偉業がいかに歴史的なことか、浮き彫りになります。(大リーグ研究家)