【アーリントン(米テキサス州)2日(日本時間3日)=四竈衛】傷心のエンゼルスが、亡き左腕に勝利を届けた。大谷翔平投手(24)が所属するエ軍が、タイラー・スカッグス投手(享年27)の急死から一夜明けたこの日、レンジャーズに逆転勝利を収めた。スタメンから外れた大谷は、代打で右前打。涙を流して戦い、惜別の白星を贈った。

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逆転勝利をつかんだエ軍ナインは、出迎えたオースマス監督らと、無言のまま固く抱き合うしかなかった。無事に試合は終わった。スカッグス投手の悲報からわずか1日。いつもは満面の笑みを浮かべる大谷も伏し目がちなまま、足早にクラブハウスへ足を向けた。

本来は、エ軍ナイン全員がグラウンドに立てる心理状態ではなかった。前日午後に訃報が伝わり、試合は中止された。一夜明けても実施は未定だった。ただ、エ軍全員がプレーすることで一致した。

メンバーを補充せず、24人で挑んだ。左胸には背番号「45」のバッジ。ベンチにはユニホーム。マウンドにも「45」と描かれた。試合中でも涙をこらえきれずプレーする選手が続出した。試合後、主砲トラウトはおえつ交じりに言った。「今日、プレーすることは困難だった。でも、スカッグスはあと1日休むことを望んでいないはずだから」。09年ドラフトの同期入団。むせび返すリーダーの涙声に、後列で見守っていた大谷もこらえ切れず、目を伏せるしかなかった。

あまりに突然の悲報に、だれもが言葉を失った。この日午後、大谷はエ軍広報を通してコメントを発表した。

「昨年、エンゼルスに入団以来のチームメートで親しかったスカッグス投手が突然亡くなられた悲しみの中、発する言葉もありません。今はただただ同投手のご冥福を心からお祈りしております」

スタメンから外れたものの、8回に代打で出場。粘った末の9球目、懸命に腕を伸ばし右前打した。黒のアンダーシャツ姿で、天に召された兄貴分へ、今、できる限りのプレーを披露した。

この日の勝利でエ軍は勝率5割に戻ったものの、プレーオフ進出への道は簡単ではない。8回にダメ押しの2ランを放ったカルフーンは、目を真っ赤にしながらも声を絞り出した。「我々のことをエンゼル(天使)が見守ってくれていることは分かっているから」。

心身ともに困難な状況、悲痛な思いは、そう簡単には変わらない。ただ、大谷とエ軍ナインにとって、予期せぬ悲報が新たな出発点となるのかもしれない。