25歳の青年の素顔がかいま見えた!? エンゼルス大谷翔平投手(25)が、リハビリの現状や私生活を語った。打者専念となったメジャー2年目は打率2割8分6厘、18本塁打、62打点。9月13日に左膝の手術を行い、今季を終えた。インタビュー前編では、好不調の波が目立ったシーズンを振り返りながら、得意のオムレツ作りのこだわりや、気になる結婚観も“告白”した。【取材、構成=斎藤庸裕】

   ◇   ◇   ◇

2015年11月19日。大谷は第1回プレミア12準決勝、韓国戦のマウンドに侍ジャパンのエースとして立っていた。あれから4年。メジャーリーガーとなり、今大会中は、米国で必死にリハビリに励んでいる。国際大会が野球人気の拡大を担う中、異国で戦う二刀流の侍の胸にも、秘めた決意があった。

「野球は伝統もあるし、歴史もある。そこを生かした見せ方もあるんじゃないかなと。そこに新しい要素が加わっていけば、また面白い魅力がどんどん出てくると思う。そういう意味でいうと、僕も特別なことはしているので、その1つの要因になれたらと思っています」

自身を「特別なこと」をしていると評する覚悟。その使命を果たすためにも、まず今は来季二刀流での完全復活を目指す。9月に受けた左膝の手術も順調に回復。キャッチボールの距離も徐々に伸ばしている。

「膝は可動域もマックスになりましたし、順調ですね。屈曲を最大にした時にちょっと違和感があるくらいで、痛みはほぼないです。打撃練習もやろうと思えばできるけど、今はそんなにやる必要がないので、投げるのに集中しています」

明るい表情と笑顔が順調な証しだ。復活へ歩を進める一方、プロ初の“一刀流”で臨んだ今シーズンは試行錯誤の連続だった。

「良かったなと思えるよりも、悪かったなというところが多かった。だから一番、悔しいシーズンと感じたのかなと。期待されているよりも、求められている仕事をシーズン通して、できなかった」

今季は出場106試合中、88試合で3番DH。6月に日本人メジャー初のサイクル安打を達成したが、好不調の波が際立った。

「僕としては終始(打撃を)いじらない方が打てるという時期があまりなかった。そこも実力なんですけど、あんまり良くなかったという感じです」

1年目に比べ、三振率は改善もゴロが増え、長打率が下がった。7月中旬まで踏ん張ったチームも失速し、5年連続でプレーオフ進出を逃した。主軸として責任を負ったが、反省ばかりではなく収穫もあった。

「(投打)2つやる年と比べて、これが良かった、悪かったというのが多かった。やっぱりバッターとしていろいろ試したり、やってみたりとかあったので。やりすぎたっていうのもありましたけど、基本的に失敗に余計なものはない」

失敗を重ねながら課題が明確になり、打者として成長を促してくれた2年目。悪い慣れもあったという。

「調子が悪い、打てない時期に対しても慣れちゃうし、それは2つやっていた時はなかった。ピッチャーを挟むと、次にバッターで出る時に何を直せばいいかが分かったりするんですけど、(打者で)出続けると余計なことをしたりというのが多くなってしまう。ちょっとずつそれに慣れてきちゃうのがあった。それ(打者だけ)が普通になればいいんでしょうけど、僕の場合はアブノーマルだったので。ちょっと違和感はあったかなと思います」

米国での生活に目を向けると、プレー以外ではもリズムをつかみ“マスター”したこともあった。

「オムレツはめちゃめちゃ作りました。オムライスも。簡単なので。基本的には球場で食べますけど、ナイターだったら、朝(自分で)作ったりという感じ」

メジャー挑戦から始めた自炊。オムレツは試食した水原通訳をうならせるほどという。こだわりもある。

「余分な調味料とか使わない方が僕に関してはいいので。むしろ使わないくらい。味は求めていないので。余分な塩分もそうですし、栄養素をしっかりとる方が大事かなと。(オムレツには)具材は基本、入れないです。例えばオムレツを作って、端っこにブロッコリーのゆでたものを添えるとか、そういう感じです。オムレツは具材を入れると、難しくなっちゃうので。語りますけどね(笑い)」

オムライスも今では簡単に作れると豪語する。楽しそうな表情で続けた。

「簡単じゃないですか。オムレツを作って、割ればいいんですから。バッティングと一緒じゃないですか。経験じゃないですか。ピッって。ピッピッて(笑い)。卵かけご飯がやっぱり一番おいしいですけど」

絶品オムレツを、試行錯誤を繰り返してレベルアップをしていく打撃と通ずると例えた25歳。誰かに作ってもらいたい気持ちにはならないのか?

「母親以外に、あんまり作ってもらった経験がないので。作ってもらいたいのはないですかね。むしろ、余分なものが入っていたりするのが嫌なので。だから、自分でやっちゃった方が楽かなと思います。洗い物が面倒くさいですけどね」

気になる結婚観についても、笑顔で明かした。

「願望はもちろんありますよ。やっぱり奥さんいて、子供がいたらね、楽しそうだなと。周りがどんどん結婚していくので。焦りはないですけどね。別に今すぐにしたいとかは特にないです。タイミングが良ければ、それは全然ありなんじゃないかなと思います」

自然体で、好きな野球に打ち込む姿は純粋そのものだ。10月末、自宅や球場で、ナショナルズが初制覇したワールドシリーズのテレビ中継に見入った。

「面白かったです。最後に抑えた(ナ軍の)ハドソン投手は春キャンプで一緒にやっていたので、あー、なんか悔しいなと思って。チームにいてくれたら(笑い)。うらやましいなと。優勝するのもそうですけど、そこでできるというだけでもやっぱり、いいなと思います」

世界一をかけた舞台で二刀流-。3年目以降も、楽しみは尽きない。(つづく)

○…エンゼルスのエプラーGMは大谷の今後について、11月下旬にブルペン投球を再開する見通しを示している。現在は約40メートルの距離でキャッチボールを行っており、「全て順調に進んでいる」と話した。本拠地エンゼルスタジアムで調整を続け、「予定通り、11月下旬にはブルペンに入るだろう」。その後3~4週間後の12月中旬頃をメドに投球プログラムを終える予定だ。

今季の大谷の主な出来事

5月7日 敵地タイガース戦で打者復帰

5月13日 敵地ツインズ戦で今季1号本塁打

6月8日 マリナーズ戦、花巻東の先輩・菊池雄星投手とメジャー初対戦。第3打席で本塁打を放つなど、3打数2安打

6月13日 敵地レイズ戦、メジャーで日本人初のサイクル安打を達成

6月26日 本拠地エンゼルスタジアムで、右肘の手術後では初めてのブルペン入り。43球を投じる

6月27日 アスレチックス戦で10号。メジャーで2年連続2ケタ本塁打に到達

6月28日 アスレチックス戦で4打数3安打。打率3割に乗せる

8月18日 ホワイトソックス戦の第3打席までメジャー最長74打席アーチなしも、第4打席で16号本塁打

8月24日 アストロズ戦前に術後12度目のブルペン入り。スライダーを解禁し、直球の球速は約140キロ

8月30日 レッドソックス戦でメジャー最多の1試合4三振。8打数無安打

9月3日 アスレチックス戦で16打席ぶり安打

9月13日 ロサンゼルス市内で左膝の二分膝蓋(しつがい)骨を除去する手術を行う