【ポートシャーロット(米フロリダ州)18日(日本時間19日)=四竈衛】空振りデビューは大器の証し-。レイズ筒香嘉智外野手(28)がメジャー1年目のキャンプ初日を終えた。注目のフリー打撃では、初球を豪快に空振り。メジャー特有の近距離投球にタイミングが合わなかったが、徐々に対応し、28スイングで4本の柵越えを放ち面目躍如。適応力の高さを披露した。

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面食らった筒香自身が、思わず苦笑いするほどだった。日米報道陣が視線を注ぐ、記念すべき? フリー打撃の初スイングで、筒香のバットが空を切った。「打撃投手との距離が日本より近いというのは知っていたんですが、想像以上に近くて…」。メジャーでは、マウンドから約5メートル前方で投げるのが通例。ただ、レ軍の場合、さらに前方で正規の約半分の9メートル前後と極めて近い。しかも、打撃投手を務めたコーチは、小さいモーションで遅球を投げるため、タイミングを取ることは簡単ではなかった。

その空振りは、自分の芯を崩さず勝負する決意の表れでもあった。イチロー、松井秀喜ら日本を代表する打者も、移籍直後のフリー打撃では、テンポやタイミングが違うこともあり、なかなか前へ飛ばせず苦労した。長嶋茂雄はデビュー戦で金田正一と対戦。フルスイングの4三振を喫し伝説となった。特にスラッガーの節目で空振りが多いのは、いかなる時も小手先でごまかそうとしない証しだ。

ただ、練習とはいえ、常に適応を迫られるのがメジャー。「最後の方は慣れましたけど、あれも経験したことのないこと。慣れなきゃいけないですね」。21スイング連続で不発だったものの、最後は7スイング4本の柵越えを放ち、高い修正能力を披露した。一方で、22日からのオープン戦では「今まで染みついた日本のストライクゾーンがあるので、そこを変えないといけない。無理やりスイングしにいくこともあると思いますし、振っちゃいけない場面もあると思う」と結果だけを追わず、失敗覚悟で冷静に臨む。

初日は外野守備に就いたが、2日目には早出で三塁の守備練習を行うなど、左翼、三塁、一塁と複数ポジションを期待される。「不安な面もたくさんありますし、ワクワクしている面の両方があります」。空振り発進から一転、足取りは、とても力強かった。

<空振りデビューメモ>

◆巨人松井秀喜(93年2月13日) ルーキーイヤー初シート打撃、無死満塁の想定場面で木田に空振り三振。3万5000人のファンがため息をついた。スコアラー推測による球速は145キロ。「やっぱり速かったです。でもむちゃくちゃ速いわけじゃないし、僕の感覚では何とかはじき返せるようになると思います」と木田に敬意を表しながらも強気のコメント。

◆日本ハム大谷(13年2月9日) 高校の学年末試験を終えて3日ぶりに2軍キャンプに合流。フリー打撃で初球を空振りし、スタンドのファンがドッと沸いた。「久々に振ったので…。昨日も振ってなかったですし。明日は反省を生かしたいです」と苦笑い。

◆巨人岡本和真(15年2月1日) キャンプ初日のフリー打撃初球、打撃投手のボールを豪快に空振り。カーブマシンに移った最初のスイングも空振り。マシン打撃での空振りは人生初だった。スタンドから笑いが起きても「狙って打ったり、見せることも必要かもしれないけど、自分のスイングができないといけない」と堂々。

◆レッズ秋山翔吾(20年2月13日) キャンプイン前に球団施設で初めて自主練習。打撃では初球を空振りして「あっ」と声を上げた。照れくさそうに「これより悪いスタートはないので、これから前向きにやれるかな」とコメント。